2016年10月12日午後の東京を襲った大規模停電は、およそ58万軒を巻き込んだほか、西武有楽町線が練馬~小竹向原間で一時運転を見合わせるなど交通機関にも影響。また、都内の一般道では約200か所の信号が消え、豊島区や新宿区、杉並区ではエレベーターも止まり、中に閉じ込められた人もいた。
そうしたなか、会社などでは仕事中にパソコンが突然ダウンして、作業途中のデータを消失。泣きたくなったビジネスパーソンらが少なくなかったようだ。
58万軒が停電
東京電力ホールディングス(HD)によると、大規模停電は10月12日15時30分頃に発生。東京都新宿区や豊島区、板橋区、杉並区、中野区などの広範囲で、最大約37万軒、延べ58万軒が停電した。
原因は、埼玉県新座市野火止にある地中送電ケーブルからの出火ではないか、と推定。14時49分に新座変電所に設置してある機器が漏電を検知。その直後に洞道(送電線などのメンテナンスを行う地下施設)で火災が発生した。
停電は同日16時25分時点で復旧。火災は13日午前0時21分に、消防による鎮火を確認した。東京電力HDは今後、出火原因などを詳しく調査するとしている。
とはいえ、電車が止まり、信号も消え、会社内でも照明が消えたり、OA機器が使えなくなったり、エレベーターに閉じ込められた人もいたという「停電パニック」は、霞が関をも巻き込み、一時は騒然とした。そんな官庁に勤める人もいたのだろうか、なかには仕事中に突然パソコンがダウンして、作業途中のデータを失ったビジネスパーソンらも多くいたもよう。
ツイッターには同日、こんな声が多く寄せられている。
「わあああああ停電で作業中のデータがああああああああ」
「いきなり停電したから作業中のデータ落ちた......」
「東京の大停電で作業中のデータ吹っ飛びましたw もう笑うしかありませんwwwww」
「作業中のデータ、保存してないんですけどぉぉぉぉ!!!」
「停電で作業中のデータ飛んだ... 東京で停電とか初めてだ」
と、とにかく突然のダウンに大慌てしたようす。
会社での作業であれば、多くがデスクトップのパソコンを使っているだろう。 なかには、
「ビルが停電になって作業中のデータが消えたぁぁぁ!これだからデスクトップはいやなんだ!」
「さあ、消えたデータのことは振り返らずに対応を考えようwww」
「そういえば、うちの職場のパソコン、停電に備えて全部ノートパソコンになったな」
といった、充電が効くノートパソコンの利用をすすめる声もある。
UPS「まさに昨日のような停電時には有効な装置」
東京の大規模停電で、作業中のデータが落ちてショックを受けている人が続出するなか、 「こんな時こそ『UPS』の必要性を確認しよう」と呼びかけるツイートもみられた。
なかには、
「サーバー管理者や社内インフラの管理者はいまこそUPSの導入を強く訴えるべきだ」
「今日ほど上司が偉いと思ったことはない!うちの職場、つい最近買ったばかりです(泣)」
といった声が寄せられている。
「UPS(Uninterruptible Power Systems=無停電電源装置)」は、一般に電力変換部分(電気回路)と蓄電部分(バッテリー)の組み合わせで構成されており、突然の停電や電源トラブルが発生した場合に、パソコンなどの電源を供給する機器に対して、一定時間、蓄電池に蓄えられた電力で安定的に電力を供給し続けることで、機器やデータを保護する装置をいう。
NTTファシリティーズは、「まさに昨日のような停電時には有効なバックアップ装置になります」と話す。
「たとえば、オフィスにあるコンセントのブレーカーとコンセントの間にUPSを接続。UPSの取り出し口(電源)からパソコンなどをつなぐことで、不意の停電などの備えになります」と説明。つまり、UPSが蓄電池の役割を担ってくれるわけだ。
同社によると、1kVA(キロボルトアンペア)のUPSに、仮に50W(ワット)のパソコンをつなげた場合、16台のパソコンを6~10分バックアップできるという。UPSが搭載しているバッテリーの容量でバックアップできるパソコンの台数や時間が異なるが、「当社で一番大きなもので16台のパソコンを180分バックアップできます」という。
とはいえ、ツイッターには、
「忘れてはいけない。UPSは安全に電源を切る時間を稼ぐだけだ!」
「UPSは停電中に作業が継続できる機器ではありません。停電直後にデータを保存してから、パソコンを止めてくれるだけです!」
との指摘もある。
UPSを利用したとしても、まずは消失しては困るデータの保存作業に徹することがいいようだ。