猫の飼い主にとって最も怖い病気が腎臓病だ。猫はほかの動物に比べ、腎不全で死ぬ割合が突出して高いが、原因は謎だった。
東京大学の宮崎徹教授(疾患生命科学)らの研究チームが、ほかの動物では腎不全を防ぐために働くタンパク質が、猫では働かないことを突きとめ、科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」(電子版)の2016年10月12日号に発表した。今後、猫の腎臓病の治療薬の開発に役立つ発見だ。
水をあまり飲まない猫は尿が濃く、腎臓に負担
腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として排出する役割がある。腎不全とは、この機能が働かなくなり、体中に老廃物がたまり様々な臓器に障害が起こる状態をいう。東京大学が同日付で発表した資料では、猫の腎不全による死亡率はずば抜けて高く、「5~6歳頃に尿管結石や腎炎などによる急性腎障害にかかった後、腎機能が回復しないまま慢性腎不全、尿毒症となり15歳前後で死ぬケースが多い」と書かれている。
猫が腎臓病になりやすい理由については、たとえば犬猫専門サイト「ペット生活」の「なぜ猫は腎不全になりやすいか?」では次の3つをあげている。
(1)猫の先祖はアフリカのリビア砂漠が原産地。雨が降らない環境を生き抜くため、尿を強力に凝縮し、水が少なくても生きていける体になった。普段、あまり水を飲まず、尿が濃いため腎臓に負担をかけている。
(2)猫は肉食動物なので、ほかの動物より多くのタンパク質をとる。タンパク質は代謝される過程で多くの老廃物を作り出してしまう。
(3)腎臓には「ネフロン」と呼ばれる組織の基本単位があり、血液をろ過して尿を作っている。猫のネフロンの数は約40万個しかない。犬の約80万個、人間の約200万個に比べ、かなり少なく、腎機能が低下しやすい。