むしろ石牟礼道子さんの方が・・・
確かに、最近のノーベル文学賞の受賞者の経歴や受賞理由は、「重い」。14年に受賞したフランスのパトリック・モディアノさん(1945~)は、ナチス・ドイツ占領下のパリで、ユダヤ系イタリア人の父と、ベルギー人で女優の母との間に生まれた作家だ。授賞理由は「最も捉え難い人々の運命を召喚し、占領下の生活世界を明らかにした記憶の芸術に対して」。
15年に受賞したのはベラルーシの女性作家、スヴェトラーナ・アレクサンドロヴナ・アレクシエーヴィッチさん(1948~)。父はベラルーシ人、母はウクライナ人。独裁政権の圧力や言論統制を避けるため、2000年にベラルーシを脱出し、西ヨーロッパを転々とした。受賞理由は「我々の時代における苦難と勇気の記念碑と言える多声的な叙述に対して」。作品『チェルノブイリの祈り』はベラルーシでは出版できなかったという。
こうした受賞理由を見ると、日本人作家では村上さんより、むしろ「水俣」をテーマとする石牟礼道子さんの方が有力なのではないかと思ってしまうほどだ。