DeNAに競り負けた巨人は戦力低下が明らかだった。再整備というより「一から出直し」だろう。なりふり構わないチーム作りが注目される。
巨人の高橋由伸監督はDeNAとの第3戦(2016年10月10日)に敗れると、ベンチからグラウンドに向かって帽子を取り、深々と頭を下げ、ロッカールームへ向かった。端正な表情に悔しさがにじみ出ていた。
「私の力のなさだと思っている」
クライマックスシリーズ最終ステージ進出が4年連続で途切れた責任を、当然ながら全て背負ったコメントである。
「来年は優勝」厳命か
巨人はDeNAと公式戦で10勝14敗1分け。それも対戦6連敗でシーズンを終えている。いわゆる「苦手」なのだが、2位チームが3位チームに敗れたことは盟主巨人にとって屈辱でしかない。
はつらつとしたDeNAに比べ、巨人はなんとなく重苦しさがあった。攻め込む力強さに欠けていた。それはコンディションの問題ではなく、戦力の低下がもたらしたものといえる。3試合のスコアは3-5、2-1、3-4(延長11回)。短期決戦で競り負けるのは底力がなくなっているからだろう。
かつての巨人を知るファンにとってはイライラが募ったと思われる。
高橋監督は今シーズンから指揮を執った。振り返ってみると、余計な作戦を執らなかったように見えた。つまり選手を信じていたからなのだろう。来年はそうはいかない。
「監督1年目だから、というのは巨人は許されない。フロントは、来年は優勝しろ、と厳命するだろう。それが巨人」
巨人OBはそう語っている。
ポイントは投手陣。エース菅野智之が9勝止まり。好投しながら勝ち星に結び付かなかった試合がかなりあった。最優秀防御率のタイトルを獲得しながら2ケタ勝利できなかった理由の一つだった。投手は簡単に手に入らない。中堅、若手の底上げが急務である。
「巨人方式」、以前のような効果は...
攻撃陣は昨年より打率、本塁打とも前年を上回ったが、勝負を左右する盗塁が30個以上も減った。安打がタイムリーにならない原因につながった。走れないというのは若い力が伸びていないからである。リーグ優勝した広島のおよそ半数でしかない。
巨人はかつて秋季練習で精鋭メンバーを選んで鍛えた。長嶋茂雄監督の「地獄の伊東キャンプ」だ。江川卓、中畑清らで、それが後に栄光を取り戻す原動力となった。このオフ、その再現が必須だろう。
と同時にドラフト会議で、日本ハムが大リーグ志望の大谷翔平を指名したように、大胆な獲得を目指す姿勢を示すことである。それがチームに新たな、大きな活力を生むことになるだろう。
他球団のFA選手を大金で獲得して戦力を整える「巨人方式」は、以前のような効果はないように思える。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)