飢餓の人類史が思春期を生き延びさせるよう進化
16~18歳頃の基礎代謝量は、男子で約1600キロカロリー、女子で約1300キロカロリーだから、約450キロカロリーはその4分の1以上になる。また、約450キロカロリーといえば、ご飯1膳の約2杯分に相当する。成長盛りの子どもはお腹いっぱい食べる必要があるはずなのに、なぜ、15歳頃にだけ急激に基礎代謝量が減るのだろうか。
ウイルキン教授は、プレスリリースの中で、「私たちにとっても、この事実は予想外の結果です。あくまで推測ですが、思春期は十分な成長のために非常に重要な時期です。人間は何万年もかけ、食べ物がない飢餓状況に備えて基礎代謝量を抑え、成長に必要なカロリーを温存するよう体を進化させてきたのではないでしょうか」と語っている。つまり、15歳頃にだけ、生命維持に必要なエネルギーを最小限に抑え、浮かせたエネルギーを成長に回せるよう体の生理機能が変化するというわけだ。
ただし、現在は食べ物がありあまるほどあり、しかも自由に買える。15歳の若者の基礎代謝量が1食分少ないことが裏目に出ている。その分、エネルギーの燃焼効率が悪くなり、もっとも食べ盛りの時期に一番太りやすい体質になってしまうからだ。
今回の研究について、米国肥満学会のスコット・カーン医師は、健康医療サイト「Health Day」(2016年9月29日付)の取材に対しこう語っている。
「驚きました。実際に15歳前後の基礎代謝量が低くなるとすると、その年代での十分な運動や食事がますます重要になってきます。ほとんどの子がいつもお腹をすかせており、いつでも高カロリーのスナック菓子を買えるお金をポケットに持っているからです。親が栄養バランスのよい食品をキッチンにストックし、健康的な習慣を早いうちから身につけさせることが何より大切です」