自然科学系ノーベル賞、BBC「老人優位」の指摘 日本人最年少、今も湯川秀樹氏の42歳

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   今年のノーベル医学・生理学賞は東工大の大隅良典特別栄誉教授(71)に決まり、3年連続日本人の受賞で国内は沸き立っている。

   今までなじみのなかった「オートファジー」も一躍、流行語になって、巷でもささやかれているほどだ。

  • 自然科学系だけが「高齢化」(写真は2010年の授賞式。Wikimedia Commonsより)
    自然科学系だけが「高齢化」(写真は2010年の授賞式。Wikimedia Commonsより)
  • 自然科学系だけが「高齢化」(写真は2010年の授賞式。Wikimedia Commonsより)

受賞年齢が1950年代から上昇

   だが、英国の公共放送BBCは今年の自然科学系3賞(医学・生理学、物理学、化学)受賞者は全員が男性で、最も若い人でも65歳、ほとんどが72歳以上だと指摘し、老人と男性優位の選考に警鐘を鳴らしている。

   BBCによると20世紀前半の受賞者の平均年齢は56歳で、現在では60代後半が圧倒的になった物理学賞受賞者の平均年齢も47歳とずいぶん若かった。ノーベル財団の資料をもとにBBCが調べた受賞者の年齢は自然科学系の場合、1950年代から上昇を続け、その傾向は現在も続いているという。

   これは経済学賞や文学賞、平和賞にはあてはまらず、経済学賞や文学賞はほぼ横ばい、平和賞は逆に年齢が下がって来ているという。

   もちろん、これは各賞の選考基準が大きく異なっているからで、ストックホルムにあるノーベル博物館のグスタフ・コールストランド学芸員はBBCに対し、「100年前、物理学者と言われる人は世界で1000人前後だった。これが現在は約100万人と推定されている。受賞するまでに時間がかかり、素晴らしい成果を上げてもすぐに受賞するのは難しくなった」と話している。同じ分野の研究者も増えると、選考委員会も成果が間違いのないものであることを確かめるのに、より長い時間をかけることを強いられるのは確かだ。

   とはいえ、BBCは小説家や経済学者、平和に向けて活動する人も100年前に比べれば圧倒的に増えたのに「なぜ自然科学系だけが高齢化したの?」と辛口の疑問を発する。

ハイゼンベルクは31歳で受賞

   実はこれには20世紀前半の科学革命ともいうべき、自然科学の劇的な進歩や発展が大きく関係している。前出のコールストランド氏は「物理学は20世紀の初め、(量子物理学が創始されるなど)劇的な進歩を遂げた。当時の研究者は若く、科学的成果を素早く挙げることができた」という。

   たとえば量子物理学者として有名なハイゼンベルクやディラックは1930年代、いずれも31歳の若さで受賞している。

   これに比べると平和賞の場合、その成果が完全なものかどうかを見極めたうえで、出しているわけではないという。

   さらにBBCはノーベル賞受賞者の性別も年次別に調査し、受賞者が相変わらず男性に偏っていることも指摘している。女性受賞者としては1903年に物理学賞を受賞したキュリー夫人(1911年に化学賞も受賞)が有名だが、この時も共同研究をしていた夫のピエール・キュリーが、夫人が候補から外されていることに強く抗議し、自分の受賞を拒否したことで彼女も受賞する結果になったという。

   女性の科学研究者が少ないことは事実だが、有力な女性研究者がノーベル賞から外れ、選考の公平性が問題にされることは過去にもあった。

   ちなみに日本人受賞者の最年少は1949年に物理学賞を受けた湯川秀樹博士の42歳で、その記録は今も破られていない。

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