思春期に悩むことがニキビだが、最近は大人のニキビも増えてきた。鏡の前でため息をつくオトナ女子の慰めになる言葉が、よく言われる「大丈夫! ニキビができるのは若い証拠。いつまでも若々しい肌でいられるよ~」。
最近、この言葉が科学的に正しいという研究が発表された。若い時にニキビで悩むことが多かった人ほど、「長生き遺伝子」が長く、肌の老化を防いでいることがわかったのだ。
肌がキレイ過ぎる人は、体の中が病気になりやすい?
従来から、お肌の専門家である皮膚科医やエステサロン関係者の間では、若い時期にニキビで悩んだ人は、年をとってから意外に肌が若々しく保たれることは「定説」だったようだ。東京・成城のエステサロン「レイシラ」オーナーのウェブサイト「美肌で幸せな毎日」(2015年11月10日付)には、むしろニキビがなく肌がキレイすぎる人はご用心、と書いてある(要約抜粋)。
「肌がキレイ過ぎる人は、実は体の中が病気になりやすいかも。要注意でございます。名言があります。『美人薄命』。肌がキレイ過ぎる人は、肌から汚れが出せない人です。皮膚は臓器の鏡。皮膚は排泄器官。皮膚って、体の中の血液が汚れて病気にならないよう、皮膚からニキビや吹き出物として出してくれるの。これが自然治癒力。人間って、すごーい! ヒャッホー! ニキビが出来るって、実は体の血液浄化作用が出来ているってこと」
もちろん、「ニキビはオッケイよ!」と勧めているわけではない。肌からではなく体内の臓器から汚れを出すよう体質改善をしよう、と続いていく。
ニキビ経験者は「長生き遺伝子」が長い
それはともかく、研究をまとめたのは英国キングス・カレッジ・ロンドン大学のチームだ。皮膚科専門誌「Journal of Investigative Dermatology」(電子版)の2016年9月27日号に発表した。同大学のプレスリリース(2016年9月28日付)によると、研究チームリーダーのシモーヌ・リベロ博士は「長年にわたり皮膚科医は、ニキビ患者の肌の老化が、ニキビがなかった人よりもゆっくり進み、しわが少ないことに気づいていました。今回の研究で、それを確認することができました」とコメントしている。
研究では、英国の双子女性1205人を対象に過去にニキビを患ったことがあるかどうかを調査、白血球の中にある「長生き遺伝子」と呼ばれるテロメアとの関連を分析した。
テロメアとは、遺伝子の染色体の末端についているキャップのような構造体。体は細胞分裂によって新しい細胞を作り、命を維持している。細胞が分裂すると染色体が同じようにコピーされるが、末端にあるテロメアだけはコピーされず、細胞分裂のたびに短くなる。テロメアが短くなると老化が進み、最終的にテロメアがなくなると、細胞が分裂をやめ死を迎える。テロメアが長い人ほど長生きをし、100歳以上の長寿者にはテロメアが長い人が多いことがわかっている。テロメアが「命の回数券」とか「長生き遺伝子」と呼ばれる由縁だ。
調査の結果、1205人の双子のうち約4分の1がニキビに悩んだ経験があった。テロメアの長さを調べると、ニキビ経験者はニキビ歴のない人より明らかにテロメアが長かった。つまり、ニキビ経験者はそれだけ老化が遅く進み、肌が若々しいということだ。
また、同じ双子でもニキビを発症する人と発症しない人がいる。そこで、姉妹から皮膚の生検を採って比較することで、ニキビの発症に関連する遺伝子を特定した。生まれつきニキビ遺伝子を持っていない人(ニキビになりにくい人)は、逆に皮膚の細胞死を促す遺伝子が活発に活動している傾向が強いことがわかった。ニキビになりにくい人は、それだけ肌の老化が進みやすいわけだ。
永遠の謎「美人薄命」の真実がわかるか
ロベロ博士は今回の結果についてこうコメントしている。
「私たちは重要な発見を2つしました。1つは、ニキビ経験者の肌がいつまでも輝いている長年の謎は、長いテロメアを持っているためだということ。もう1つは、ニキビの発症には特定の遺伝子が関わっているということです。この2つが、相関関係にあるのかどうかは分かりません。さらなる研究課題は、テロメアとニキビ遺伝子の関係の究明です」
「長生き遺伝子」テロメアとニキビ遺伝子の関係が分かれば、お肌が荒れやすい体質と長寿の関係が突きとめられる。逆にいうと、肌のキレイな人がなぜ短命なのか、永遠の謎「美人薄命」の真実がわかるかもしれない。