東京工業大学の大隅良典栄誉教授(71)が2016年のノーベル生理学・医学賞の受賞を決めたことで、日本人のノーベル賞受賞は3年連続となった。
こういった状況に気をもんでいるのがお隣の韓国だ。過去には00年に金大中大統領(当時)が平和賞を受賞しただけで、自然科学分野での受賞はいまだにゼロ。韓国メディアでは、「原因探し」を試みる社説やコラムが相次いでされている。
「研究開発投資の割合は世界最高水準なのに...」
京郷新聞が10月9日に掲載したコラムは、
「日本が22人の受賞者を輩出し、中国も15年に受賞者が出た。韓国は、今年も手ぶらだった。官民合わせて研究開発(R&D)投資の割合が国内総生産(GDP)比4.29%(86兆ウォン=約7.9兆円)で世界最高水準なのに、だ」
と嘆く。コラムでは10月7日に行われた識者の対談を紹介しており、出席者からは
「基礎科学予算の割合をより高めることが必要」
「限られた研究費を効率的に使うことができる環境を用意し、科学者たちの士気を高める社会的努力が必要」
といった声が上がったという。
朝鮮日報も予算配分のあり方を疑問視した。10月5日、「研究費世界一の韓国になぜ科学分野ノーベル賞受賞者がいないのか」と題した社説で、「科学者は公務員が研究課題を定めるトップダウン式の研究開発費配分に問題があると口をそろえる」と指摘。官主導で重点分野が設定され、研究開発費の配分が適切に機能していないとの見方を示した。
「物質の根本をめぐる100年の時間を通じた日本人の執念」
同紙の10月6日の論説主幹のコラムでは、「100年の時間を通じた日本人の執念」を説いた。1908年、後に東北大学総長を務める小川正孝氏は43番元素を発見したとして「ニッポニウム」と命名したが、地球上に存在しないとして後に取り消された。それから約100年が経ってから森田浩介九州大教授ら理化学研究所のチームが113番元素を発見し、16年に「ニホニウム」と命名した。こういった経緯を引き合いに、コラムでは、
「物質の根本をめぐる100年の時間を通じた日本人の執念を知れば、『日本はノーベル賞を受賞できるのに韓国は何をしているのか』とは質問できないはずだ」
とした。
中央日報も10月6日の記者コラムでは、16年9月に死去したイスラエルのシモン・ペレス前大統領について
「若者の挑戦精神を鼓吹し、創業基盤施設を構築するのに生涯を捧げた」
と高く評価。韓国が優秀な人材と産業的な基盤を持っているにもかかわらず、若者が世界で活躍できていない状況を
「個人の能力や教育・産業界の問題として済ませることでない。『韓国のシモン・ペレス』と記憶される政治家は果たしていつ出てくるのだろうか」
などと憂えた。
今年のノーベル賞で受賞者が未発表なのは経済学賞と文学賞で、それぞれ10日、13日(いずれも日本時間)にも発表予定だ。