秘密は調理方法と調味料にあった
「肥満者を健康に」「健康な人は、身心ともにもっと健康に」というわけで、「凄いぞ、1975年型和食!」と喝采を贈りたくなるが、いったいどんな食事だったか。発表資料の中で、1975年頃の典型的な献立として次の例をあげている。
【朝食】ご飯、卵焼き、納豆、みそ汁(キャベツと油揚げ)、果物(ミカン2個)。
【昼食】きつねうどん(具は、油揚げ、カマボコ、ホウレンソウ、刻みネギ)、果物(ミカン2個)。
【夕食】ご飯、五目豆、サバのみそ煮、すまし汁(ハクサイとワカメ)。
こうした食事のどこがいいのだろうか。都築准教授は次の点を指摘している。
(1)多様性:一汁三菜(主食、汁物、主菜、副菜×2)を基本として、色々な食材を少しずつ食べ、バランスがよい。
(2)調理法:「煮る」「蒸す」「生(なま)」を優先し、次いで「ゆでる」「焼く」が多く、油を使う「揚げる」「炒める」が控えめだ。
(3)食材:タンパク質の多くを大豆製品や魚介類から摂っている。また、野菜(漬物を含む)、果物、海藻、キノコ、緑茶を積極的に摂取し、食物繊維が豊富だ。一方、卵、乳製品、肉は食べすぎにならない程度に摂っている。
(4)調味料:出し汁や発酵系調味料(しょうゆ、みそ、酢、みりん、お酒)を上手に使って、糖分(砂糖)や塩分の摂取量を抑えている。
こうした食事がエネルギーの燃焼効率をアップし、肥満を防ぎ、生活習慣病やがんから体を守っているというわけだ。
逆にもっとも不健康とされた、現在に近い2005年の献立の1例をみると―。
【朝食】トースト、オムレツ、アスパラのベーコン巻、果物、牛乳。
【昼食】ハンバーガー、サラダ、ジュース。
【夕食】ご飯、豚のショウガ焼き、ポテトサラダ、タマネギと豆のスープ。
脂肪分が多い食材に加え、調理法も「炒める」「揚げる」が増えて油を多く使っている。塩分、糖分も多い。「メタボリック症候群になってください」といわんばかりのメニューだ。
「和食はヘルシー」と言っても、現在の日本食は欧米の食生活の影響を受け、健康度を失いつつあると都築准教授は指摘し、発表資料の中でこうコメントしている。
「現在の食生活を見直し、老化の防止に役立つ『日本食』を世界にアピールするためにも、健康な日本食のルーツである1975年の食事を発信していきたい」