「和食」は2013年にユネスコの世界無形文化遺産に登録された。「美しさ、季節の表現」「新鮮な食材」などいくつか理由があるが、中でも「優れた栄養バランス」が評価されたことが大きい。
ところで、和食といっても時代によって変遷が激しい。いつの時代の料理が健康的なのだろうか? 江戸時代? 昭和? それともすっかり西洋化された現在? 実は、いろいろな年代の料理を比べた結果、1975年(昭和50年)頃の日本料理が最もヘルシーだったというユニークな研究がある。
4つの時代の献立を比べて最高だったのは
この研究をまとめたのは、東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らのグループだ。2014年3月28日と2016年10月2日の2回、ともに日本農芸化学会のシンポジウムで発表した。2回に分けて発表したのは、1回目はマウスの実験、2回目は人間を対象にしたテストを行ない、1975年当時の日本料理がいかに健康によかったかを念には念を入れて実証したからだ。
東北大学の発表資料(1回目=2014年3月25日付、2回目=2016年10月3日付)をもとに、和食のヘルシーさを追求した研究を紹介しよう。まず、初回の研究から。
都築准教授らは、栄養管理士の指導を受けながら、厚生労働省(旧厚生省)の国民栄養調査に基づき、1960年(昭和35年)、1975年(昭和50年)、1990年(平成2年)、2005年(平成17年)の4つの時代の平均的な和食の献立を、それぞれ1週間、朝昼晩21食分を再現した。15年ごとの和食の変化を比較するためだ。そして、それぞれの時代の献立を実際に調理したものを凍結乾燥・粉末化し、マウスに食べさせ、寿命や健康状態、学習能力などを分析した。
その結果、1975年の和食を食べたマウスが一番長生きをし、学習機能の維持の成績もよく、がんや糖尿病の発生率が低かった。逆に老化が一番早く、がんや糖尿病の発生率が最も高かったのが、現在に近い2005年の和食だった。たとえば、体重を比較すると、最悪の2005年を100%として1990年は99%、1975年は89%、1960年は100%と、1975年だけが突出して低い。また、内臓脂肪量も2005年の100%に対し、1990年は77%、1975年は46%、1960年は86%で、1975年がずば抜けて少ない。