タカタ「リコール」対応めぐる綱引き 影響力保ちたい自動車メーカー

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   世界で10人以上の「死亡事故」を起こしたエアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、会社存続の危機に陥っているタカタ。その再建を支援するスポンサー選びがようやく本格化してきた。2016年9月中に締め切られたスポンサー候補の1次入札には、大阪の化学品メーカー「ダイセル」と米投資ファンド「ベインキャピタル」との連合など、5陣営が応札。年内にも1グループに絞って優先交渉権を与える見通しだ。

   再建に向けて具体的に動き出したのは確かだが、タカタに大きな影響力を持つホンダやトヨタ自動車など大手自動車メーカーの意向も絡むため、予定通りに進むかはなお見通せない。

  • タカタはエアバッグのリコール問題を抱えている。(画像はイメージ)
    タカタはエアバッグのリコール問題を抱えている。(画像はイメージ)
  • タカタはエアバッグのリコール問題を抱えている。(画像はイメージ)

リコール費用を肩代わり

   タカタのエアバッグを巡る問題は、タカタの対応が後手後手に回っている印象が強く、「当事者能力を失っている」(自動車大手幹部)とあきれる見方も自動車業界には少なくない。何しろ最初のリコールは2008年と、リーマン・ショックが起きた年にまでさかのぼる。酌むべき事情がさまざまにあったにせよ、早急に原因を究明できないなど対応にことごとく時間がかかり、カギを握る米当局と、まともに渡り合えないまま問題を制御できずに崩壊していった。ただ、タカタには他を凌駕する技術力があり、エアバッグとシートベルトでそれぞれ世界シェア2割を握る。このため、なくなっては困る日本の自動車メーカーがリコール費用を肩代わりし、支えてきた。

   現在タカタの「会長兼社長」に君臨する創業家の高田重久氏が、先代の実父、重一郎氏の後継者としてタカタ社長に就任したのが2007年。したがって、社長就任以降の重久氏の経営手腕の拙劣さがリコール問題をこじらせ、経営危機に陥った大きな要因と見られても仕方ない。人望厚く社内で求心力があったとされる重一郎氏は2011年に死去。社内では人事権を握る創業家は絶対の存在で逆らえないとされるだけに、重久氏のリーダーシップが期待されたわけだが、そうはいかずに自滅した。

   会社を傾かせただけに「重久氏が引責辞任」の報道が間欠泉のようになされたが、これに関する公の場での本人の説明といえば、今(16)年6月の株主総会(報道陣には非公開)で株主の質問に答える形で「道筋を付けたら(辞任を)考える」と述べたとされるものくらいで、辞任を言明したわけではない。タカタの筆頭株主はタカタ株の5割超を握る高田家の資産管理会社であり、株主総会で高田家以外から辞任を求められても柳に風というわけだ。

米当局との合意

   一方、リコール問題は米当局(米運輸省高速道路交通安全局=NHTSA)の采配によって収束に向かっている。NHTSAとタカタは5月、「異常破裂が過去に1件でも起きているタイプのエアバッグはすべてリコールする」ことで合意したのだ。自動車王国、米国での決定は世界に波及する。タカタ製エアバッグのリコールは累計1億個に上り、費用は1兆円を超える見通しだ。

   ただ、タカタは2016年3月期まで2年連続最終赤字で、純資産は1200億円余り。9月には内装材を手がける米子会社の売却を発表、100億円程度の売却益を得るなどしている。しかし1兆円など到底捻出できるはずもなく、まかなえない分は自動車メーカー間で負担割合を議論してもらうしかない。そうした中でようやく、スポンサー探しが本格化し、5陣営が手を挙げたというわけだ。このうち冒頭にあげたダイセルは、タカタにエアバッグ用のガス発生装置を納品する会社。そのほかはスウェーデンのエアバッグ大手や米国自動車部品メーカーなどが並ぶ。

   タカタは自動車メーカーと協議のうえ、スポンサー候補を絞り込み、年内に決定する運び。ようやく高田家からスポンサー企業にタカタの経営権が移ることになる。ただ、自動車メーカー側には、リコール費用を肩代わりする以上はタカタへの影響力を保ちたいという思いがある。このため、タカタの債務をタカタ株に切り替える「デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)」と呼ばれる手法で自動車メーカーがタカタに出資する案なども浮上している。

   スポンサーを含めた関係者による支援の枠組みを決める調整に時間がかかる可能性もある。

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