主要先進7か国(G7)の第2回交通大臣会合が2016年9月23~25日、長野県軽井沢町で開かれ、「自動運転技術の早期実用化について相互に協力し、産学官が連携して実用化に取り組む」とする共同宣言を行った。自動車の自動運転は日欧と米国の2陣営が車両開発で主導権争いを演じている。G7はこの分野で国際協調する姿勢を示したが、米国は自動運転に関する初の指針を発表するなど日欧を一歩リードしており、今後の国際的な安全基準作りは難航が予想される。
自動運転をめぐっては現在、国連の「自動車基準調和世界フォーラム」の専門家会議で国際的な安全基準作りの議論が進んでいる。
フォード、グーグルは「運転手のいない完全自動運転車」の開発進める
自動運転は、アクセル、ハンドル、ブレーキの三つの操作のうち、どれか一つを自動化した「レベル1」、複数を自動化した「レベル2」、三つの操作を自動で行いながらも必要な時は運転手が関与する「レベル3」、乗員が運転に全く関与しない「レベル4」まで4段階に分類される。
現在、世界的に実用化している自動運転は、高速道路で前方の車に追随して走るなど「レベル2」が基本だが、一部車種では車線変更も可能になるなど、次第に「レベル3」に近づいている。
現在の国際基準では時速10キロ超の車線変更を自動操舵で行うことは認められていないが、現実に日米欧でレベル2に相当する自動操舵の乗用車が登場しているため、国連は2018年にも高速道路での自動操舵を認める方向という。
国連の専門家会議は日本とドイツが共同議長として議論を主導し、欧州連合(EU)や韓国などが参加しているが、米国、カナダ、中国などは参加していない。G7は事実上、日欧と米加の2グループに分かれている形だ。
米国では自動車大手フォード・モーターが今(16)年8月、運転操作を必要としない完全自動運転車(レベル4)を2021年までに実用化する計画を発表した。ハンドルやアクセル、ブレーキペダルを取り付けない方針で、完全自動運転を目指している。グーグルも運転手のいない完全自動運転車の開発を進めている。
協調よりも主導権
自動運転は自動車メーカーの開発競争が先行し、国際的な基準作りが追いついていない。そもそも、国連の道路交通関係の条約(ジュネーブ条約)は無人運転を認めていないのだ。米国道路交通安全局(NHTSA)も現段階では無人運転を認めていないが、人工知能(AI)が安全にアクセルやブレーキを操作するのであれば、将来的に認める方向で議論が進むとみられている。
自動車の次世代技術として期待される自動運転をめぐっては、完全自動運転に向け、慎重に技術開発を進める日欧と、日欧より積極的な米国の2陣営で温度差がある。このため、自動運転に向けた国際的な基準づくりの一本化が望まれている。
軽井沢で開かれた第2回G7交通大臣会合では、G7としての結束が共同宣言に盛り込まれたが、米国は同会合の開催直前の9月20日、自国の安全基準を指針(ガイドライン)として定めた。自動運転車が備えるべき性能として障害物の発見や対処法、サイバー攻撃からの防御、倫理面の検討など15項目を示し、日本のメディアでも大きく報じられた。ただし、米国は日欧との協調よりも自国の基準づくりを優先し、国際的に主導権を握ることを目指しており、G7の共同宣言の空文化が早くも懸念されている。