豊洲新市場の問題で、盛り土をせず地下空間を作ったのは技術会議からの提言だったと東京都が説明していたのはウソだったことが分かった。今後は、なぜ都側が勝手に暴走したのか、が焦点になりそうだ。
地下空間は「だれがいつ」決めたのかはあいまいなままだが、ここに来て都議会の論戦で、都側は、ある「ネタ元」を挙げるようになった。
都議会で担当部長2人が「偽装資料」提示
それは、盛り土の工法などを検討した技術会議だ。
2016年10月6日の経済・港湾委員会で、中央卸売市場の担当部長2人が相次いでこのネタ元に言及した。08年12月25日に開かれた技術会議の会合で提出された資料に、「地下水汚染の浄化ができるよう、建物下に作業空間を確保する必要がある」という記載があるというのだ。
ところが、10月7日放送のテレ朝系「モーニングショー」に、当時の技術会議委員で元都環境科学研究所所長の長谷川猛氏が出演して、技術会議が「作業空間」を提言したことはないと全面否定した。
長谷川氏はまず、問題の資料について、「『こういう事項を報告書に載せたらどうですか』という形で、事務局の都側から出てきた」と指摘した。技術会議で一度も議論をしたことがなかったため、委員の総意としてこの話を断り、08年2月にまとめた報告書には「作業空間」は一切記載されなかった、と証言した。
一方、モーニングショーによると、盛り土問題が発覚した16年9月、都から技術会議の元座長に「会合の資料を公表していいですか?」と電話があり、元座長が「作業空間」の資料とは知らずに承諾すると、9月16日になって都のホームページ上に、問題の資料が掲載された。このことを後で知った元座長は、都の「偽装工作」に怒っていたという。
小池都知事「自己検証の限界を露呈した」
「作業空間」については、9月30日に都が発表した盛り土問題の調査報告書にも掲載されていたことが分かった。そこでは、「技術会議の独自提案としてモニタリング空間が提示された」と書かれている。
技術会議の提言の真偽については、10月7日の経済・港湾委員会で取り上げられ、公明党議員から「都側の提案だったのではないか」と追及された。これに対し、岸本良一中央卸売市場長は、「指摘のとおりで、間違いだった」と認めて、ウソをついていたことを陳謝した。
小池百合子都知事も、この日の定例会見で質問を受け、「(委員会での担当部長2人の)答弁が十分でなかったのは、残念、遺憾としか言いようがない」と答えた。盛り土問題の調査報告書についても、「自己検証の限界を露呈した」とし、議会での議論を踏まえ、「全体をチェックし直したうえで、第2段階の報告書をまとめることができればと思っている」と述べた。