日本将棋連盟が、棋士に対して向けられている「カンニング疑惑」の撲滅に乗り出した。棋士の不正行為を防止するため、対局中のスマートフォンなどの電子機器の使用禁止、対局場からの外出制限という2つの「規制」を導入すると発表したのだ。
対局中の電子機器使用が発覚した場合、違反者には除名を含めた厳しい処分が下される。将棋連盟広報課の担当者は、2016年10月6日のJ-CASTニュースの取材に「棋士が不正をしているなどという疑惑を一掃したい」と規制導入の意図を説明した。
棋士から「規制強化」の要望が高まっていた
今回の規制導入は、将棋連盟が5日に報道各社に送ったファクスで発表された。それによると、
(1)対局開始前に電子機器をロッカーに預け、対局中は電子機器を使用することを禁止する
(2)対局している間、将棋会館より外出禁止とする(敷地内はOK)
という規則が新たに追加される。施行は12月14日からで、東京と大阪の将棋会館で指される全ての公式戦が対象だ。地方で行われるタイトル戦に関しては、主催社と連盟が協議してルールを決めるという。
将棋連盟広報課の担当者によれば、電子機器の使用禁止については「金属探知機を使っての検査も実施する方向で考えている」。また、対局が日をまたぐ「2日制」の場合は、
「棋士が初日に預けた電子機器を受け取れるのは、対局がすべて終了した後になる予定です」
とした。10月15日に開幕する「竜王戦」(渡辺明竜王‐三浦弘行九段)でも、同様のルールが適用されるという。
こうした規制強化の背景にあるのは、当の棋士側からの要望だ。9月26日に行われた連盟の東西合同月例会で、出席した60人の棋士にアンケートをとったところ、6割超が「対局日は外出禁止・電子機器ロッカー預け」を支持したという。
「過去に棋士の不正が発覚したことはありません」
ファクスの中では、棋士から寄せられた「時代の流れ・ソフトの進歩で規制はやむを得ず」「速やかな実施を」などの意見も紹介していた。また、連盟広報担当者によれば、
「気分転換をしたいなどの理由から、外出の禁止に反対する意見はいくつかありました。ですが、電子機器の持ち込みに対する反対意見はほとんどありませんでした」
という。
こうした棋士側からの要望だけではなく、インターネット上に出ていた根拠不明の「噂」も、不正防止の規定導入を後押ししたようだ。コンピュータの将棋ソフトの性能向上にあわせる形で、ツイッターやネット掲示板では以前から、
「離席回数が異常に多い棋士は疑っちゃう」
「××(編集部伏字、棋士名)は●●(編集部伏字)タイトル戦で確実にやっていたはず」
「誘惑に負ける人がいてもおかしくない」
などと「カンニング」を疑う声が数多く出ていた。実際、上述の担当者も「そうした噂については、把握しています」と話す。その上で、
「実際のところ、過去に棋士の不正が発覚したことはありません。今回の規制については、棋士の不正行為を防ぐとともに、そうした疑惑を一掃することも狙いとなります」
と説明。あくまで「予防策」である点を強調していた。