東京五輪のためなどで千代田区内のイチョウなどの街路樹300本が伐採されるのは許せないとして、市民団体が署名サイトなどで反対を訴えている。ただ、区では倒木の恐れがあるなどと説明しており、ネット上では議論になっている。
伐採が予定されている3つの通りには、明治大学の校舎や神保町の古書店街がある。イチョウには、樹齢100年近いものもあるとされ、長い間親しまれてきた。
4日間で伐採反対が1万5000人
ところが、そのうちの1つの区道「神田警察通り」で2016年7月、イチョウの大木に「樹木撤去のお知らせ」という貼り紙が掲げられた。ここでは、220メートルの通りにイチョウ32本とプラタナス5本が植えられているが、その並木が半分ぐらい枝落としされると、動きに驚いた市民らから区に疑問や批判が相次いだ。
8月6日には、反対の声を受けて伐採が一時中断したと一部で報じられ、市民団体「千代田の街路樹を守る会」が9月16日にホームページを開設して街路樹の保護を訴えた。
千代田区内ではこのほかに、オリンピックのマラソン候補コースに上がっている都道の「白山通り」やプラタナスの並木がある区道の「明大通り」で街路樹の伐採計画がある。守る会では、区議会に街路樹を守るよう求める陳情を出したほか、10月2日からは署名サイト「change.org」で伐採中止のキャンペーンを始めた。五輪に向けた道路工事で計300本もの街路樹を伐採しようとしているとして、「100年の街路樹をオリンピック開発から守って下さい!」と区や都に求めている。
10月3日になって、ツイッターでこの動きが紹介されると、まとめブログなども翌日から取り上げて、ネット上で話題になっている。署名サイトでは、5日夕現在で1万5000人もの賛同者が出るまでになった。
工事は一時中断、「議会の結論を受けて対応」
千代田区の道路公園課では10月5日、J-CASTニュースの取材に対し、「神田警察通り」での街路樹伐採について次のように説明した。
「通りの歩道が狭く、車イスも通り抜けにくいほか、樹木が大きくなって倒木などの恐れも出てきました。そこで、地元の協議会と5年前から議論して、歩道を広くすることにしました。歩道に自転車の通行区分を作ることにもしたため、車道が一方通行の4車線から3車線と狭くなり、そこに駐車帯を作る必要もあって樹木を伐採することになったということです。切った後は、別の樹木を植えることを検討しています」
時期的には、2020年の東京五輪までには道路を整備したいという理由もあったという。16年3月に着工して約2億円をかけて翌17年3月に完成させる予定だったが、市民団体などからの陳情を受けて区議会で議論になっており、道路公園課では、「工事の再開などは、議会の結論を受けて対応したい」と話す。
「明大通り」についても、歩道拡幅のためで、東京五輪は意識しているという。プラタナスの伐採は10月を予定していたが、これも議会の結論を尊重したいとしている。
東京都の第一建設事務所工事課では、都道「白山通り」の街路樹一部伐採について、電線の地中化のためだと取材に明かした。「景観上から五輪を意識はしていますが、主たる目的は、地震で電柱が倒れて道路をふさぐことがないようにすることです。地元の町内会などには説明して、伐採についても理解してもらっています」と言う。
ツイッターなどでは、街路樹伐採が議論になっており、「これは許せない!」「五輪は何様だね」といった反対の声が上がっているほか、「理由あるんだから仕方ない」「オリンピックに絡める必要ない」などと、伐採に理解を示す反論も出ている。