がん告知された人は落ち込み、出産まで思い浮かばない
番組ゲストに、聖マリアンナ医科大学の鈴木直教授(産婦人科)が登場した。がん治療を受ける人でも子どもを生めるように、がん専門医と産婦人科医の連携を進める「日本がん・生殖医療学会」を2012年に立ち上げた人だ。
国谷裕子キャスター「なぜ医師は治療の前に、患者に妊娠や出産へのリスクを説明しないのでしょうか」
鈴木直教授「何よりも最優先するのは、がんをしっかり治療すること。説明しないわけではないが、まずは治っていただくことが重要なのです」
国谷キャスター「患者から妊娠・出産したいという要望はないのですか?」
鈴木教授「なかなか、そこまで思い浮かぶケースは少ないです。がん告知をした後の患者さんの心理状況を調べると、2週間後に半数以上の方が適応障害といって、落ち込んだ状態になってしまう。まず治療を何とか受け、頑張っていかなくてはという気持ちでいっぱいの人がほとんどなのです」
つまり、医師は治すことを最優先させる、患者はほとんどパニック状態になっている、しかも、医師は生殖医療の専門知識が乏しい。そのままがん治療が進み、気が付いたら出産できない体になっているケースが多いのだ。
番組では、夫が胃がん、自分も乳がんにかかりながら、無事に男児を出産したトシミさんを取り上げた。不妊治療を続けていたトシミさんは、医師から乳がんを告げられた時、子どもを断念するように言われた。しかし、あきらめきれずに掛りつけの産婦人科医に相談。受精卵の凍結方法の資料をもらった。それをがんの主治医に持っていき、自分で説明をした。
トシミさん「がん専門医と産婦人科医に接点がないから、両方を行き来し、私が慣れない医療用語を使って説明しなくてはなりませんでした。抗がん剤治療を行なう前に卵子を取り出して受精卵を保存しましたが、ちゃんと両方の医師に自分の状態が伝わっているか、ずっと不安でした」