「鏡よ、鏡、世界で一番美しいのは誰?」――。ディズニーアニメでおなじみの「魔法の鏡」は美しさを教えてくれるが、東北大学は2016年9月27日、前に立つだけでその日の健康状態を教えてくれる鏡型のモニタリング装置を開発したと発表した。
この装置は、その名も「魔法の鏡」と呼ばれ、同年10月1日に仙台国際センターで開催された「第39回日本高血圧学会」で展示された。
鏡の前に立つと血行状態が映し出される
同大学の発表資料によると、開発したのは同大先端情報技術研究部の吉澤誠教授らの研究グループ。現在市販されている健康状態を記録するリストバンド型のウェアラブル装置は、特別なセンサーを常時身につける必要があり、使い勝手がよくない。買ったはいいが、習慣化しないで放っておく人が少なくない。そこで、ビデオカメラとコンピューターを内蔵した鏡型のディスプレーの前に立つだけで、自律神経の指標に基づいたその日の「健康予報」を表示する装置を開発した。
仕組みはこうだ「魔法の鏡」の前に立つと、ビデオカメラで撮影した身体映像から皮下の血行状態の変化をわかりやすく動画で表示する。心拍数だけでなく、血圧の変動まで推測する。このため、鏡に映しだされたモザイク状の映像と自分の顔を比較することで、自分の現在の体調とその日の変化をある程度予測することができる。
毎日、洗面所や鏡台で自分の顔をチェックする人は多い。この装置を鏡代わりに装着すると、多くの人が悩んでいる冷え性、肩こり、むくみ、だるさ、食欲不振など、いわゆる「不定愁訴」と呼ばれる自律神経に関する症状を客観的に把握することができるという。
研究グループでは、発表資料の中で、「家庭内の鏡だけではなく、自動車内に設置して運転手の体調管理に役立てたり、アスリートが全身を鏡に映し出して試合前の状態を把握したりするなど、様々な分野での応用を目指したい」とコメントしている。