市場との対話
この状態から、短期間で脱するのは容易ではない」と、日銀の責任を追及せず、「新方針の実行に当たって日銀が留意すべきは、市場との対話である」と、説明責任を求める程度。「日経」はもっと日銀に甘く、「全体としては経済や金融活動の実態に合わせて金融政策を運営できるようになる。マイナス金利が金融機関にもたらす悪影響も直視して政策の枠組みを直したことで、金融市場や金融機関との対話が向上することも期待したい」と持ち上げる。
同じアベノミクス寄りの論調が目立つ「産経」は、2紙よりは厳しめで、マイナス金利政策の効果について、「一段の金利低下が進む中でも、企業の資金需要は乏しく融資増は限定的だ。投資や消費を活性化する効果が期待ほど高まらない一方で、金融機関の収益圧迫や年金、保険の運用難などの副作用が指摘されてきた」と問題点を指摘。ただ、「行き過ぎた動きに歯止めをかける意味合いだろう」と日銀の新政策を全体としては評価している。
3紙は政府の役割にも多くの字数を費やしている。「政府も企業も経済の潜在力を高める改革に一段と深く踏み込み、日銀の緩和策との相乗効果を高めていくことが急がれる」(「日経」)、「政府は成長戦略を断行して潜在成長率を高め、企業も内部留保を投資や賃上げに振り向ける努力が要る」(「読売」)、「潜在成長力や生産性を高めることに結び付く、改革と戦略への取り組みが急務である」(「産経」)といった具合だ。使い古された表現ではあるが、正面から政府・日銀に批判的な言い回しが少ない3紙の社説だけに、逆に、「日銀頼みの限界」を印象付ける格好になっている。