日銀が2016年9月21日の金融政策決定会合で、黒田東彦総裁のもとで進めてきた大規模な金融緩和の「総括的な検証」を行い、金融緩和の「新しい枠組み」の導入を決めた。
マイナス金利の幅(年0.1%)を維持したうえで、長期金利の指標となる10年物国債利回りを0%程度に誘導するのが柱で、物価上昇率が前年比2%を安定的に超えるまで金融緩和を続けるという「時間軸」の政策を強化する方針も示した。
2%目標への短期決戦を長期戦に転換
今回の決定は、黒田東彦総裁が就任当初に掲げた2年で2%という物価上昇率の目標が3年版を経ても未達成の一方、年間80兆円という巨額の国債購入が、2年後くらいには限界に達するとの指摘もあることから、操作目標を事実上、「量」から「金利」に切り替え、2%目標への短期決戦を長期戦に転換したといえる。国債購入額は、金利や経済の環境も見ながら減らしていける余地を作る狙いだと解説される。
27日に大阪で講演した黒田総裁は早速、今後の金融緩和について「マイナス金利の深掘りと長期金利操作目標の引き下げが中心的な手段になる」と述べ、金利をターゲットにした政策運営を進めることを強調した。
全国紙各紙は、22日朝刊の社説(「産経」は主張)で一斉に論じたが、アベノミクスに批判的か、好意的か、批判的かという日頃の報道ぶりを反映して、見方は割れている。
相変わらず日銀に厳しいのは「毎日」と「朝日」だ。「こうした検証や枠組みの変更が必要になったこと自体、行き詰まりを如実に示している」と位置付ける「毎日」は、「日銀がお金の量を本気で増やしさえすれば、2%の目標は達成できるというのが、当時の約束だった。(略)日銀は検証の中で、14年の消費税引き上げの影響や海外の景気の鈍化を挙げているが、政策のプロなら、想定外とは言い訳できないだろう」と手厳しく批判。「朝日」は、「従来の政策の限界や副作用をはっきり認めないまま、次々と新しいメニューを打ち出してゆく姿勢は、『建て増しを重ねた旅館』のような迷路を生む」と皮肉る。