最大11.5ゲーム差をひっくり返した日本ハムの優勝は大谷翔平が原動力だった。久しぶりに現れた大ヒーローがMVPに選ばれるのは間違いない。
スコア1-0。出した走者は安打、四球各1の2人のみ。2塁を踏ませず。奪った三振15。2016年9月28日、西武相手にしびれるような快投で日本ハムの優勝を決めた大谷の投球内容である。
「すごい」「文句のつけようがない」
うるさい評論家たちから絶賛の声が上がったほど大谷のピッチングは圧巻だった。まさに1点あれば十分、という出来映えといえた。
体に自信を持って臨んだシーズン
優勝のかかる一戦だけにプレッシャーがかかる先発と思われた。
「前日負けて、自分に(優勝を決める)チャンスが回ってきた。こんなことはあまりない。やりがいがあると思った」
大谷の試合後のコメントである。勝負どころに強い大リーガーのような雰囲気だった。まるで緊張を楽しむような投球で、新しい現代っ子の姿を見たような思いがした。
振り返って見ると、ここ一番の活躍は見事だった。
とりわけ天王山の21日のソフトバンク戦だ。先発し、8回を無失点に抑え、首位に立った。
また打者としては25日の楽天戦の一打が大きかった。終盤まで0-1と苦しむ中、8回に同点タイムリーを放って延長に持ち込み、11回に決勝のホームを踏みサヨナラ勝ち。マジックナンバー3とし、そのままゴールした。
今シーズンの大谷は昨(15)年までの弱々しさがなかった。大人の選手という感じがした。
昨年の登録は身長193センチ、体重90キロだったが、今年は体重で2キロ増えている(身長は変わらず)。本人によれば、ジーンズはワンサイズ大きくなり、スーツはほとんど作り直したそうである。体に自信を持ってシーズンに臨んだようである。
パ・リーグのMVPは「決定的」
投手としては9月13日のオリックス戦で164キロの史上最速を記録するなど、持ち前の球威がさらに増した。これも体がしっかりしたからだろう。
一方、打者としてはバットの重さを軽くしたという。重量で打つのではなく、スイングのスピードで打てるようになったのだろう。ヤクルト山田哲人の感じと思えばいい。
その成果が優勝決定時で10勝4敗、打率3割2分2厘、22本塁打。見事な投打二刀流である。
パ・リーグのMVPは決定的といえる。これといったタイトルは取れないかもしれないが、内容は文句なし。投打でこれほど活躍し、優勝に貢献した選手はいない。11.5ゲーム差を逆転したのは大谷がいたからこそである。
待望の「入場料を払って見たい選手」「絵になる選手」が出てきた。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)