資生堂の美容液「アルティミューン」のキャンペーンに使われているコピーが、ネットで話題になっている。
そのコピーは「美しいひとには、免疫がある」。女性の容姿と免疫は無関係だとする研究結果も出ているが、ツイッターに「俺には免疫がないのか」「狙いがよく分からない」との反響が寄せられた。コピーに科学的な裏付けはあるのか、同社に聞いた。
「俺には免疫がないのか」
「アルティミューン」は16年で発売2周年を迎える。それを記念するべく、16年8月25日に特設サイトがオープンした。「美しいひとには、免疫がある」はサイト名、サイト内の記事の両方に使われているコピーだ。
ここでいう「免疫」とは具体的に何を指すのか。「『美しいひとには、免疫がある』理由」と題したサイト内のコラムで、ビューティー・ディレクターの麻生綾さんは「NK(ナチュラルキラー)細胞に代表される、体をウイルスや細菌から守る免疫システムが、『楽しい気持ち』で活発になる」「免疫システムは当然肌にもあって、もれなく作用し、ちょっとやそっとのストレスやトラブルに負けない、強い肌を育んでくれる」と分析。
その上で、「『楽しい気持ち』いっぱいで免疫がきちんと働いているひとは、強く、美しい。だから逆に言うなら、美しいひとには、免疫があるんです」と書いている。
「楽しい気持ち」になると「免疫システム」が活性化し肌がきれいになる、という意味なのか。ただ、当該コラムのみならずサイト内を見渡しても、「免疫」の意味や「免疫システム」と容姿の相関性を説明した部分は確認できなかった。
そうしたこともあり、9月25日ごろからツイッターで
「『免疫』についての説明があるかと思ったら全く説明なし」
「狙いがよく分からない」
と不満の声が相次いだ。また、「美しい人には、免疫がある」を「優れた容姿の人は免疫力が強い」という意味にとらえる人も多く、「俺には免疫がないのか」「ワシはぶっさいくだとでも言うんか?」との指摘もみられた。
「免疫」とは「精神的な耐性」のこと
ちなみに、容姿と免疫力の関係性は研究で「否定」されている。13年5月、英国王立協会の専門誌「バイオロジー・レターズ」に掲載されたフィンランド・トゥルク大学の研究発表によると、女性の容姿は出産能力と強い相関関係を示した一方、免疫力の高さとの相関関係は示さなかったという。
このコピーに、科学的・医療的な裏付けはあるのか。そして、「免疫」の意味とは何なのか。
資生堂広報部の担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、
「現代女性がストレスや肌の問題を抱える中、『精神的な耐性』が必要とされている、と感じ、こうしたコピーを打ち出しました」
と語る。
つまり、「免疫」とは「精神的な耐性」のことを例えている、ということらしい。辞書には、医学的意味のほかに、「物事が度重なって、そのことに慣れてしまうこと」(デジタル大辞泉)という意味も載ってはいるが、サイト内の文章にそうした意味は明示されてはいない。今回のような表現にした理由について、資生堂広報部は「医薬品医療機器等法(旧薬事法)で商品効果の宣伝が制限される中、『商品の世界観を伝えたい』という思いがあったからです」とし、
「(コピーは)『女性を応援する』という意味合いが強いため、『科学的な裏付け』とはまた違う意味になってくるかと思います」
と語っている。