人見知りする赤ちゃんは感受性豊か 泣きながらも相手をしっかり観察

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相手に「近づきたい」「離れたい」と葛藤している

   そこで研究グループは、人見知り行動の心理を探るため、生後7~12か月の赤ちゃん57人を対象に実験を行なった。まず、母親にアンケートをとり、赤ちゃんがどの程度見知らぬ相手を怖がるか、また、興味を持って接近したがるか、「人見知り」度を回答してもらった。その結果、人見知りの強い赤ちゃんは、「怖がり」と「接近」の両方の気持ちが強いことがわかった。つまり、まだ1歳前の段階で相手に対し相反する感情の「葛藤」を抱えているのだ。

   次に3種類の顔写真を用意して、赤ちゃんの視線の動きや注視している時間を「視線反応計測装置」を使い観察した。写真は、(1)母親の笑顔(2)他人(女性)の笑顔(3)母親と他人を合成した笑顔、の3つだ。(3)の写真は母親に半分似ているが、半分は他人であることから、「親しみ」と同時に「不気味さ」を感じる写真だ。

   その結果、次のことがわかった。

(1)人見知りの強い赤ちゃんも、人見知りの弱い赤ちゃんも、母親の写真を親近感から、他人の写真を目新しさからよく見る。しかし、合成写真は不気味さもあって、あまり見ない。

(2)写真を見続ける時間(注視時間)を比べると、人見知りの強い赤ちゃんは弱い赤ちゃんより、他人の顔を見ている時間が長い。逆に合成写真を見る時間が少ない。これは、人見知りの弱い赤ちゃんより、見知らぬ相手をよく観察していることを意味する。合成写真の不気味さがよくわかるということは、それだけ他人を観察しているから。

(3)顔写真を「目」「鼻」「口」の部分に分け、注視時間を部分ごとに分析すると、人見知りの強い赤ちゃんの方が相手の「目」を見ている時間が長かった。特に最初に相手と目が合った時は、目を凝視する敏感な目の動きをした。これは相手が母親でも他人でも同じだった。つまり、相手(特に目)に強い関心を示している。

(4)最後に、母親と他人の写真を、それぞれ真正面からこちらを見ている写真(正視顔)と、よそ見をしている写真(逸視顔)の2種類を見せて比較した。すると、人見知りの弱い赤ちゃんは正視顔を見る時間が長かったが、人見知りの強い赤ちゃんは逸視顔を長い間見ていた。このことから、人見知りの弱い赤ちゃんは相手とコミュニケーションをとろうとしているのに対し、人見知りの強い赤ちゃんは、自分を見ている相手からは目をそらすが、相手が自分を見ていない時は非常によく観察していることがわかる。

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