「一部の間で『誤った権利意識』や『変なお客様意識』を助長」
国立病院機構・宇都宮病院は、「様」から「さん」に敬称を改めるとする文書を12年11月1日付でウェブサイトに発表した。その理由に「一部の人の『誤った権利意識』や『変なお客様意識』を助長している、との指摘もあります」「当院への投書の中にも『患者様』の呼び方を改めるべきとの意見があり、連携している医療機関からも同様の意見が寄せられています」といった点をあげている。
医療法人桜桂会・犬山病院(愛知県犬山市)は、加藤荘二院長名義で、「『患者様』から『患者さん』へ」というお知らせを08年4月に病院ウェブサイトに掲載した。そこで、
「医療はサービス業であり、患者さんは顧客(お客様)で、外来等の窓口に限ればデパートやホテルと同じように『様』でもおかしくはないでしょう」
としつつも、特に治療が長期にわたる場合は患者との関係に
「水平性(対等性)が要求されますが、『様』では上下関係が意識されたり他人行儀となったりで、治療への一体感が生まれません」
と主張している。加えて、「日常生活指導等をしたり、時には本人の意に反する入院(医療保護入院)をさせたり、さらには隔離や拘束することもある等、『様』づけでは実態には合いません」という理由から、「『さん』づけが自然で程良い呼び方と思われます」という。
敬称だけで心理はどう変わるのだろうか。「様」と「さん」ではないが、「さん」「くん」「ちゃん」それぞれが与える印象を比較検証した文献が、2011年の日本心理学会第75回大会で発表され、ウェブサイトにも掲載された。
検証では、敬称だけが異なる大学生の150文字程度の紹介文を、242人に読んでもらった。内訳は「さん」79人、「くん」78人、「ちゃん」79人で、紹介文はすべて同内容だ。すると、「さん」づけだった人には「厳しい」「大人びた」「かわいくない」「ユーモラス」という印象が多かったのに対して、「くん」だと「優しい」「生真面目」、「ちゃん」になると「フレンドリー」「かわいい」「幼い」と変わった。敬称によって、それだけで印象や態度を変えてしまうのかもしれない。