女の子を『理想的な女性』に作り上げ、ずっと影響力を
182人の妊婦を対象に、「生まれてくる子の性別を事前に知る・聞かない」行為と子育てに対する考え方との関連を調べた。一般的な性格・心理テストのほかに、次の項目についても詳細なテストを行なった。
(1)男女の役割分担に関する平等意識調査:「子育ては男女平等で行なうべき否か」「男性は仕事、女性は家庭という考え方が強いか」「男の子だから活発に、女の子だから可愛らしくという考え方が強いか」など。
(2)新しい考え、動きへの開放性調査:「従来の習慣を大事にするか、新しい社会の動きに積極的に参加する気持ちが強いか」など。
(3)子育て完璧主義の意識調査:「子どもに対しどのくらい完璧性を求めるか」「子どもの自主性をどのくらい重んじることができるか」など。
対象者の約3分の2が出生前に赤ちゃんの性別を知っていた。調査の結果、次のことがわかった。
(1)平等意識調査:このテストで高得点をとった人(男女平等意識が高い人)は、性別を聞かない割合が、得点が低い人に比べ87%低かった。聞かない派の母親は、知りたい派の母親に比べ、男性も子育てを担うべきだという意識が非常に強く、共働きの割合が高かった。また、学歴も高く、「女の子だからピンクや紫色の可愛い服を着せなくては」という考え方をとらない人が多かった。
(2)開放性調査:このテストで高得点をとった人(新しい考え方への共感度が高い人)も聞かない派の母親が多かった。聞かない派の母親は妊娠を自然なものと考え、事前に性別を知ることには意味がないと考える人が多かった。
(3)完璧主義調査:このテストで高得点をとった人(子育ては完璧に行なわなくてはという意識が高い人)は、知りたい派の母親が多かった。知りたい派の母親は、性別を知ることで妊娠中の不安を和らげたいと考える傾向が強かった。
この結果について同大学のレティシア・コティラ博士は、大学の発表資料の中でこうコメントしている。
「自分の赤ちゃんの性別を知りたがるかどうかは、子育て方に対する母親の考え方を反映しています。性別を知りたがらない母親は、子どもの性別に合った服・おもちゃ・色をそろえる気があまりなく、子どもの自由な意思に任せたいと考える傾向があります。一方、知りたがる母親は、例えば、女の子だと分かると、ピンクや紫色の物をそろえたがります。そのことによって、女の子を『理想的な女性』に作り上げ、その子が大人になるまで、常に女性として何がふさわしいかを考え、子どもに影響力を及ぼそうとするのです」
つまり、知りたがり派のママは「子育て完璧主義」「男女の役割は異なり、女性は家庭に」「男の子は男らしく、女の子は女らしく」といった考え方が強く、聞かない派は「自由放任の子育て」「共働きで共同作業」「『男の子・女の子らしく』という考えを押し付けない」という考えが強いというわけだ。