長野県駒ヶ根市の水道水に灯油が混入していたことが分かり、ネット上で、「飲むとどうなるのか」など驚きと不安の声が出ている。
「確かに朝顔洗ったときに灯油みたいな臭いがするなって思った...」。駒ヶ根市在住の30代女性は2016年9月23日、こうツイートした。
漏れた灯油が雨水で取水路に流れ込む
市内ではこの日朝から、水道水が油臭いといった訴えが市役所に相次いだ。市が水質検査をした結果、切石浄水場からの水道水に灯油が少量混入していたことが判明した。全体の7割に当たる約9800世帯に被害があり、市では、復旧に努めるとともに、給水車を出動させて対応した。翌24日も約3000世帯に影響が出て、この日夕になってやっと市が完全復旧を宣言した。
市の調べで、駒ヶ根高原の宿泊施設から灯油が漏れていたことが分かった。地元紙などによると、この施設は温泉旅館で、風呂用のボイラーが故障するなどして灯油が漏れ、雨水に流されて旅館そばにある水道の取水路に流れ込んだとみられている。
ネット上でも、灯油混入は話題になり、掲示板には「これは酷すぎる」「これから水道水も安心できんなぁ」といった嘆きが相次いだ。もし誤って飲んでしまったら、健康に影響があるのかといった不安の声も出ていた。
日本中毒情報センターのホームページによると、乳幼児らがストーブ用などの灯油を誤飲する事故は14年に178件もあり、飲むと吐き気や胃の痛みといった中毒症状が出る。また、吐くなどして気管に入ると、化学性肺炎になる恐れがある。100ミリリットルほどで致死量になり、気管に入ると、数ミリリットルでも命の危険があるそうだ。
水道水に灯油が混入するケースは、過去に何度か報じられている。
市「健康被害の報告は受けていない」
最近では、東京都日の出町で2010年に保育園の屋外タンクから灯油が漏れ、水道水が油臭いとの問い合わせが相次いだことがあった。また、熊本県八代市では14年、JAの灯油タンクから漏れて、このときは、高齢者女性2人がおう吐や下痢などの症状を訴え、1人は3日間通院していた。
今回の駒ヶ根市のケースでは、「コーヒーは妙な味だった」「水がのどに引っ掛かった」などと飲んだ人の話が報じられている。市では、9月26日夕までに健康被害の報告は受けていないというが、「万が一、吐き気等の症状がある場合は医療機関を受診してください」と呼びかけている。
ネット上では、「浄水場であらゆる検査してるんじゃなかったのかよ」「水道管取り替えるまで使う気になれない」と市の対応に疑問や批判が出た。こうした点について、市の総務部長は9月26日、J-CASTニュースの取材にこう説明した。
「水に油膜があるか検査する装置はありますが、今回は、大雨で水量が多くて油が水に混ざり込んでしまい、表面に浮いてきませんでした。油が水に混ざっているため、水道管の内側に付着していませんので、取り替えなくても大丈夫だと考えています」
なお、東京都では、浄水課によると、利根川水系などの浄水場には、油膜がなくても検出できる油分検知計が設置されており、活性炭を使って油を吸着するなどして微量の灯油ならろ過できるという。ただ、地方の自治体では、こうした設備を導入すると水道料金が値上がりするという問題があるようだ。