「綱取り」の期待を大関・稀勢の里はまたもや裏切った。秋場所は10勝5敗(2016年9月25日千秋楽)。一から出直しとなったことで横綱待望論は一気に冷めたようである。
秋場所は大関・豪栄道の初優勝に湧いた。それも全勝とあって、まさにフィーバー。確かにニュース性は大きかった。
・カド番大関の全勝優勝は史上初
・日本人力士の全勝優勝は1996年秋場所の貴乃花以来20年ぶり
・大阪出身力士の優勝は1930年夏場所の山錦以来86年ぶり
・初優勝が全勝は1994年名古屋場所の武蔵丸以来22年ぶり7人目
などである。
トップから引導を渡された瞬間
観客の入りは15日間「満員御礼」。この満員は昨年の九州場所6日目から85日間連続中となっている。東京場所は6場所連続満員だ。この盛況の中で稀勢の里は冷めた存在になっていた。
この秋場所は稀勢の里の綱取りが最大の売り物だった。ところが期待を大きく裏切った。千秋楽の報道陣のインタビューはつらかっただろう。声に力がなかった。
「収穫? (2ケタ勝利)それだけでしょう」
秋場所の総括は、遠のいた横綱への夢だった。新たな挑戦となるのだが、3場所続いた綱取りに敗れたショックは隠しきれない。来場所からの再スタートとなる。
「しっかり頑張るしかない」
今場所の主役交代は11日目だった。10連勝の豪栄道と対戦した稀勢の里は力負け。この時点で稀勢の里は3敗となり、横綱昇進の条件だった優勝への望みがほぼなくなった。片や豪栄道は勢いを増した。
そして13日目、稀勢の里は横綱・鶴竜に負け、八角理事長から無念のコメントが出た。
「(綱取りは)仕切り直し、だな」
協会はなんとしてでも日本人横綱を誕生させたかった。ファンの大きな期待でもあった。そのトップから引導を渡された瞬間だった。