日本のNPO「言論NPO」と中国の「中国国際出版集団」は2016年9月23日、恒例の「日中共同世論調査」の結果を発表した。互いの国民に対する印象が「良くない」とする人が依然として圧倒的だ。日本人の中国に対する感情がさらに悪化したのに対して、逆に中国人が日本に対して抱く感情は、わずかに改善しつつある。
中国人が日本人に「良い印象」を持つ理由の中で、急激に伸びているのが日本の自然環境や観光地に関するものだ。16年に入ってから、日本を訪れる中国人観光客は前年比で3割以上伸びている。このことが対日イメージの向上につながっている可能性がありそうだ。
日本人は9割超が対中イメージ「良くない」
調査は8月から9月にかけて18歳以上の男女を対象に行われ、日本では1000、中国では10都市で1587の有効回答を得た。
日本人の中国に対する印象は「良くない」(「どちらかといえば良くない」を含む)との回答は91.6%で、05年の調査開始から2番目に高い水準になった。一方、中国人で日本に対する印象を「良くない」と考える人は76.7%にのぼるが、4年連続で減少しており、改善傾向だ。
相手国に「良い」という印象を持つ人は、日本では8.0%(15年10.6%)、中国では21.7%(同21.4%)にとどまっている。
両国民が互いに「良くない」という感情を抱く背景には、歴史認識や尖閣諸島、南シナ海などの問題が横たわっている。
日本人が中国に「良くない印象」を持つ最も多い理由は、「尖閣諸島周辺の日本領海や領空をたびたび侵犯しているから」の64.6%(15年46.4%)で、「中国が国際社会でとっている行動が強引で違和感を覚えるから」51.3%(同31.0%)だった。逆に中国人が日本に「良くない印象」を持つ理由は、「侵略の歴史をきちんと謝罪し反省していないから」63.6%(15年70.5%)、「日本が魚釣島を国有化し対立を引き起こしたから」が60.6%(同68.1%)の順に多かった。
では、「良い印象」はどうか。日本人が中国に対して「良い印象」を持つ理由で最も多いのは、「留学生の交流など民間交流により中国人の存在が身近になっているから」46.3%で、15年の34.0%から12.3ポイントも増加した。次に多かったのが「中国古来の文化や歴史に関心があるから」38.8%(15年35.8%)だった。
逆に中国人が日本に対して「良い印象」を持つ理由としては、「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高いから」が52.9%(15年57.0%)で最も多い。次に多かったのが「日本の環境は美しく、自然が風光明媚で、温泉等の観光地が多いから」の51.7%で、15年の40.1%から11.6ポイント増えた。
止まらない訪日中国人の増加
16年9月21日に日本政府観光局(JNTO)が発表した16年1~8月累計の訪日外国人観光客は前年同期比24.7%増の1605万9500人。15年よりも2か月前倒しで「1500万人超え」を達成した。そのうち中国からの観光客は、全体の約27.9%を占める448万4900万人。マレーシアの35.0%に次ぐ、34.0%という高い伸び率を記録している。
こういった背景が中国人の対日イメージ改善につながった可能性もある。今回の調査では、「日本への訪問経験がある」という人が15年の7.9%から13.5%に増加しており、言論NPOの工藤泰志代表が9月23日の記者会見で明かしたところによると、この13.5%のうち日本を「良い印象」を持っている人は58.8%にのぼった。逆に、訪日経験がない人ではわずか16%だった。