日本骨髄バンク設立25周年の節目の全国大会が2016年9月17日、横浜市の慶応義塾大学日吉キャンパスで開かれた。
バンクとしての骨髄移植は7月末現在で 19747件。年内に2万件を超えるのは確実とあって、「2万人のありがとう」を副題に掲げた。
「若いドナー」が求められている
この日に開かれたのは、骨髄バンクの世界組織・世界骨髄バンク機構が、ドナー2500万人突破を記念して、昨年から9月の第3土曜日を「世界骨髄バンクドナーデー」と決めたのに合わせたという。
骨髄移植は格段に進歩したものの、移植が間に合わなかったり、経過不良で亡くなったりした人はどうしても出る。こうした人たちに黙とうを捧げた後、式典と、それに続いての講演などがあった。バンクの設立前から医療記者として骨髄移植に関心を持ってきた私も、それらを聞きながらいろんな思いが交錯した。
式典の最後に小寺良尚・副理事長が日本骨髄バンクの事業報告をした。ドナー登録者は当初の目標30万人を超えて7月末現在で463000余人。ただし、ドナーは高齢化し、55歳未満の定年制のため全体では減少傾向で「若いドナー」が求められている。移植も14年をピークにやや減り気味だが、10月には2万件に達しそうだ。20年前は、血縁者間に比べると悪かった移植後の生存率も年々向上し、12年以降は差がなくなっている。移植希望者の96%に適したドナー候補者が見つかるが、実際に移植できたのは55%。ドナーから見て120日もかかるコーディネート期間の短縮が課題だ。
iPS細胞による再生医療が期待されているが、本人の細胞作りは時間と費用がかかりすぎる。特殊な数十人の血液があれば大部分の日本人に適合したiPS細胞が作れることから、日本骨髄バンクは京大iPS細胞研究所に協力しているが、返礼の意を込めて中畑龍俊・副所長がiPS細胞研究の現状を報告した。また、慶応義塾大学病院の岡本真一郎教授 (内科) と近藤咲子・看護師長が移植治療や患者支援の現場を報告した。
最後の「2万人のありがとう」は、司会の浅野史郎・元宮城県知事を含めて移植を受けた男女6人、ドナーの男女 3人が登壇した。移植を受けた女性は移植前の前処置のつらさや移植後の生活を話しながら涙で絶句、ドナーも人助けができたことを心底から喜んでいたのが印象的だった。(医療ジャーナリスト・田辺功)