西川一誠・福井県知事「無責任極まりない」
「サイクル」にこだわるのには、核兵器の材料にもなるプルトニウムの扱いの問題がある。日本は現在、約48トンのプルトニウム(原爆6000発を製造可能)を持つ。日米原子力協定により、核兵器の非保有国では例外的にプルトニウムを抽出する再処理を認められているという事情がある。「もんじゅ」の廃炉は「サイクル」の枠組みの変更ということになり、国際的に日本のプルトニウム保有への懸念が高まる恐れがある。特に、同協定が2018年に改定時期を迎えることから、米国などに説明できる新たな「サイクル」の道筋を示す必要がある。
これまで高速増殖炉の開発に多くの国が取り組んだが、半世紀がたっても実用化できていない。今回、政府が日仏協力で取り組む考えを示す「ASTRID」は「高速炉」で、「増殖」の2文字が消えている。プルトニウムを増殖するのでなく、使うことに主眼がある技術で、それでも核燃サイクルの中でプルトニウムが一方的にたまるのを避ける意味がある。
フランスでは高速増殖実証炉「フェニックス」が、「もんじゅ」と同様にナトリウム事故を起こして廃炉に追い込まれ、日本より早く「高速炉」に転じた。「ASTRID」は2030年ごろの運転開始を目指すが、基本設計完了予定の2019年までしか予算が確保されておらず、想定より資金がかかりそうだとの情報もあるといい、「日本は金蔓になるだけ」(文科省筋)との懸念もささやかれるが、「核燃サイクルの旗を降ろせない以上、何らかの研究の道の明示が不可欠であり、それが高速炉」(大手紙科学部記者)。
「もんじゅ」廃炉の議論は、原子力規制委員会が2015年11月、半年をめどにJAEAに代わる新たな運営主体を示すよう勧告したのがきっかけ。文科省は新たな受け皿つくりを模索したが、電力会社も協力を拒むなど暗礁に乗り上げ、廃炉への流れが一気にできた。
しかし、地元の西川一誠・福井県知事は国策に協力してきただけに、「地元に全く説明がない。無責任極まりない」と強く反発している。実際に廃炉になる場合、費用の捻出をどうするかが大きな課題になり、地元への交付金などの扱いを含め、理解を得る作業も難航は必至だ。