レンズメーカーのタムロンが主催する鉄道写真コンテスト「第9回 タムロン鉄道風景コンテスト 私の好きな鉄道風景ベストショット」の入賞作品に、ネットで「盗用疑惑」が浮上した。
当該作品は「東京駅のホームに到着する新幹線」を捉えたもの。しかし、一部の鉄道ファンが3年前に開かれた別のフォトコンテストの入選作品と同じ、と指摘し、騒ぎになっている。
応募総数7098点からの入選作品
タムロンによると、「鉄道風景コンテスト」は16年5月1日から8月25日の締め切りで開催され、16年は応募人数1894名、応募総数7098点で、87名が入賞した。9月21日からは、作者のコメントとともに入賞作品を公式サイトで紹介している。
応募作品を「一般の部」「小・中・高校生の部」の2部に分け、前者は写真家の広田尚敬さん、後者はフォトライターの矢野直美さんが審査。入賞作品を大賞(各部1枚ずつ)、準大賞(各部3枚ずつ)、審査員特別賞(各部3枚ずつ)、入選(各部15枚ずつ)、佳作(各部20枚ずつ)の6段階に振り分けた。
今回問題視されたのは、そんな「入選」作品の1枚。撮影者は「愛知県の15歳」となっている。タイトルは「ホームに滑りこみ」で、撮影地・コメントの欄に「東京都千代田区 終着東京駅に滑りこむように到着」とある。
東海道新幹線の車両同士がすれ違う瞬間をとらえたこの1枚。横から噴射されるスプリンクラーの水と夕日が車両に重なり合い、何とも言えない雰囲気を醸し出している。
しかし、この写真について、公式サイトに載った9月21日ごろから、複数の鉄道ファンが「盗用ではないか」「別のフォトコンテストの入賞作品と同じだ」という指摘をツイッターで相次いで投稿した。
「別のフォトコンテスト」とは、鉄道雑誌を刊行する交友社とキヤノンが13年に開いた「2013 第37回 鉄道ファン/キヤノン フォトコンテスト」だ。
東海道新幹線のスプリンクラーは関ヶ原1か所
確かに、二つの写真は、スプリンクラーの水の噴射の状態も含めてそっくりだ。2013年の写真の撮影者は、知人から事実を知らされ、16年9月22日のブログ記事で、この写真は12年12月24日に「雪の関ヶ原」で撮影したものだと主張。
盗用されているのでは、との指摘について、
「いやはやこれはこれは・・・間違いなくうちの写真ですねぇww」
「しかしなんだぁ・・・別のフォトコンとはいえ入賞作品を盗作するなんて思い切りがいいですねぇww」
とコメントしている。
確かに、東海道新幹線のスプリンクラーは16年現在、岐阜羽島~米原間の関ヶ原付近にしか設置されていない。東京駅に到着する車両がスプリンクラーの水を浴びる光景は、不自然だと言える。
タムロン側は事態を把握しているのか。フォトコンテストの担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、「(盗用の)指摘は把握しており、現在調査中です」と話した。「東京都千代田区 終着東京駅に滑りこむように到着」は応募用紙に書かれた作者のコメントで、そのままサイト上に掲載したという。そのうえで、この担当者は
「審査委員はおもに『絵柄』を見て選考しました。そのため、応募用紙を隅から隅まで読んで事実確認をしたわけではありません。また、諸手続きのため入賞作品の作者には一応連絡しましたが、『電話に出た本人が作者かどうか』までは確認していません」
とし、撮影者の本人確認もしていないことを認めている。担当者は最後に
「性善説に立ちますと、作者のコメントは本当だと信じたいのですが...」
と胸の内を明かした。
問題の写真は9月23日15時現在も、コンテストのサイト上に残されている。
(2016年9月23日18時半追記 タムロンは23日夕、「盗用」が指摘されていた作品について、「応募資格にそぐわない作品を入賞させてしまい、入賞者本人からも辞退の申し出がありましたので審査結果の一部を変更いたしました」との説明文を掲載し、サイト上から該当作品を削除した。)