三菱商事がコンビニエンスストア3位のローソンを子会社化することになった。ローソンの国内店舗網は1万2000店余りで、首位セブン-イレブン、サークルKサンクスと統合した2位ファミリーマートよりも5000~6000店少ない。海外店舗網も上位2社に大幅に出遅れている。ローソンは三菱商事との関係を強化し、商品に競争力を持たせることなどで上位2社を追撃する。三菱商事にとっては浮き沈みの激しい資源ではなく、食品などの非資源系ビジネスを強化する狙いがある。
2016年9月16日の発表によると、三菱商事は現在もローソン株を議決権ベースで33.47%持つ筆頭株主だが、17年1月をめどに実施する株式の公開買い付け(TOB)によって50.10%に出資比率を引き上げる。株式を買い増すために投じる資金は1440億円程度となる見通し。三菱商事の世界的なネットワークを生かして食材などを調達し、商品力を高めたい考えだ。
新浪氏サントリー転身の余波
ローソンは、もともとダイエーグループのコンビニチェーンとして誕生し、国内各地に出店した。いち早く「全47都道府県出店」を果たすなど、先駆者の一面もあった。しかし、1990年代以降にダイエーが凋落して影響力を失う一方、食材供給などで取引関係にあった三菱商事が徐々にローソンとの関わりを強めてきた。そして2000年、三菱商事はローソンに資本参加して以降、持ち株比率を段階的に高め、新浪剛史氏のような経営者も送り込んできた。
ただ、リーダーシップや胆力、発言力のある新浪氏は影響力が強すぎた面があった。2002年に社長に就任した新浪氏は「三菱商事出身者」というよりむしろ「個性的な経営者」の色合いが濃くなっていった印象だ。このためもあって、三菱商事とローソンの関係が強まる方向に向かわず、ローソン社内では「三菱商事といえども一取引先」との意識が残ったままだったと指摘する向きもある。
転機が訪れたのは、2014年。その年5月に社長を退いて会長となったばかりの新浪氏が、10月にサントリーホールディングス社長へ華麗なる転身を果たしたのだ。コンビニに商品を供給する側で、しかもナショナルブランド「サントリー」のトップになった以上、すべてのコンビニに対して全方位外交が必要な立場となり、ローソンへの影響力は一気に薄れた。トップ人事で三菱商事がローソンへのグリップを強める第一段階と言える。
商品力いかに高めるか
新浪氏の次にローソン社長に就任したのは、ユニクロを展開するファーストリテイリングやロッテリアの経営トップを務めた経験もある「経営のプロ」、玉塚元一氏。新浪氏と親しく、新浪氏が後任含みでローソン入りさせた人物だ。トップ人事で三菱商事がグリップを強める第2段階として、この玉塚氏が16年6月、社長から会長兼最高経営責任者(CEO)となり、三菱商事出身の竹増貞信副社長が社長兼最高執行責任者(COO)に就任した。玉塚氏はCEOとはいえ、経営がワントップからツートップになった以上、「玉塚色」は薄まらざるをえない。
三菱商事がローソンへの肩入れを強める背景には、三菱商事自身が抱える問題がある。長年経営の柱となり強みでもあった液化天然ガス(LNG)などの資源ビジネスが、資源価格の低迷で逆に屋台骨を揺るがす赤字を生む事態となっているからだ。三菱商事は2016年3月期に創業以来初の最終赤字に転落。中期経営計画などで今後は食料など「非資源」に注力する姿勢を明確にしている。現在の三菱商事の垣内威彦社長自身、同社としてはこれまで傍流だった食料部門出身というのも、「非資源」強化の本気度を示している。垣内社長としては小売りのローソン、卸の三菱食品のほか、「川上」で食材を調達することにも力を入れ、世界の三菱商事の食料の商流を太く強くさせる考えだ。
一方、コンビニ業界では9月1日のファミマ・サークルKサンクス統合で国内店舗が1万7000~1万8000店程度と、一気にセブン(約1万9000店)と肩を並べた。サークルKサンクスとの統合はローソンも狙っていたとされるが、数ではローソンが完全に置いて行かれた格好だ。コンビニ経営で重要な1日1店舗当たりの売上高も、セブンの66万円に対しローソンは10万円以上の差をつけられている。三菱商事との関係強化でいかに商品力を高めるか。まさに、待ったなしの課題だ。