推理小説やドラマで、序盤で謎だった事柄を終盤で明らかにしていく手法を指して「伏線を回収する」と呼ぶことがある。疑問が氷解していく過程はカタルシスを覚えるものだが、この「伏線」を「付箋」と誤用しているのを「けっこう目にした」と、複数のブロガーが指摘した。
「伏線」も「付箋」も同じ「はる」ものだから混同しているのではないか、と分析しているが、ネットで検索してみると、「付箋の回収」という誤用がいたるところで現れた。 果たしてどれだけの人がこの意味で使っているのか。
「伏線を張る」が「付箋を貼る」に?
指摘したのはブロガーの「ねんざB@nenzab」さん。自身の「ねんざブログ」2016年9月12日付の記事で、その前日に最終回を迎えたミステリードラマ「そして、誰もいなくなった」(日本テレビ系)を話題として取り上げた。これまでの回で謎がいくつも散りばめられていたため、その張られてきた「伏線」がどう回収されていくかが注目されたドラマだ。
ねんざBさんが違和感を覚えたのは、ドラマの放送終了後にツイッターを見た時だ。
「『付箋が回収できていない』という意見をけっこう目にしたんですよ。これ、なんか変じゃないですか?」
と指摘したのだ。
広辞苑では、「伏線」について「小説・戯曲・詩などで、後の方で述べる事柄をあらかじめ前の方でほのめかしておくもの」「後の事の準備として、前もってひそかに設けておくもの」という意味を載せる。一方、「付箋」には「用件を書きつけて貼る小さい紙。目じるしのために貼りつける紙。貼りがみ」という意味しかない。
ねんざBさんは「文字の打ち間違えという可能性もありますが、おそらく『伏線が回収できていない』ことを間違って覚えているんでしょう」とし、その原因を「『付箋』も『貼る』ものだし、『伏線』は『張る』もの。あとに続くのが同じ『はる』という単語なので、混同して覚えているのかもしれませんね」と分析した。
「ふくせん」と「ふせん」の発音が似ていることも、誤用の背景にあるかもしれない。