スマートフォン(スマホ)の見すぎが、肩こりや目のかすみ、ひじや手首の炎症、睡眠不足、さらに依存症......と、健康に多くの悪影響を与えることが問題になっているが、新たに「失明」というショッキングな危険があることがわかった。
といっても、完全に失明するわけではない。就寝前に「寝ながらスマホ」をすると、翌朝起きた時に片方の目だけ一時的に見えなくなる。しばらくすると回復するが、患者にとって気味が悪いことこのうえもない。英ロンドンの眼科医がこの謎に挑み、解明した。
1人は右目だけ、1人は左右どちらかが失明
「Transient Smartphone"Blindness"」(一過性のスマホ失明)と題する論文が発表されたのは米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(電子版)の2016年6月23日号だ。著者はロンドンのモアフィールズ眼科病院のオマール・マフォール氏と同僚の眼科医。論文の中で、朝になると片目だけが見えなくなる2人の女性患者の不思議な症例を紹介した。
(1)22歳のAさん。5か月前から毎週2~3回、朝起きると右目だけが見えなくなる。わかるのは物の輪郭ぐらい。この状態が約20分間続いた後、正常な状態に回復する。また、深夜起きた時も右目の視力が落ちるが、朝ほどではない。
(2)40歳のBさん。6か月前から毎朝、片目だけ約15分間見えなくなる。Aさんと違うのは、左右どちらの目と決まっておらず、その日によってまちまちなこと。不安にかられて救急車を何度も呼んだことがあり、多くの眼科で診てもらったが、異常が見つからなかった。
マフォール医師らは2人の目を精密検査したが異常はなかった。脳画像と心血管検査、血液中のタンパク質、ビタミン類の検査なども行なったが、正常だった。そこで、朝起きると発症する点に注目、カギは夜寝る前の生活態度にあると考え、2人を詳しく問診した。すると、2人ともベッドで寝ながらスマホを見ることを習慣にしていた。しかし、なぜ片目だけに発症するのか、しかもAさんは右目に、Bさんは両方の目に発症する理由がわからなかった。