日本銀行の金融政策決定会合と米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦市場公開委員会(FOMC)の結論が、相次いで示される。日銀は「金融の追加緩和に踏み切るのか」、またFRBは「利上げするのか」、が焦点だ。
この決定を前に、外国為替証拠金(FX)取引業者が、2016年6月の英国の欧州連合(EU)離脱時のような為替相場の急変に備えて、再び顧客に慎重な取引を呼びかけている。
取引管理に慎重を期すよう、業者が注意喚起
日米それぞれの金融政策決定会合は、9月21日昼過ぎに日銀の金融政策決定会合の結果が判明。22日3時ごろ(いずれも日本時間)には米FRBの結果が判明する予定。その決定次第で、円相場を大きく動かす「材料」になる可能性がある。
これを受けて、FX大手の外為どっとコムは9月14日、ホームページに「日米中銀、金融政策の同日発表(9/21)に関する特設ページ」を新たに設けた。金融政策の決定発表に伴う相場変動への注意事項をまとめたほか、日本の追加緩和と米国の利上げの有無の組み合わせごとに想定される状況などを紹介している。
SBIホールディングス傘下のSBIFXトレードも9月16日、「決定内容次第では米ドル円を中心とした価格の急変動が短期間に複数回発生する可能性があります」と警鐘を鳴らし、上田ハーローFXもホームページで取引管理に慎重を期すように注意喚起している。
英国がEU離脱を決めた国民投票があった6月24日と同様に、銀行間取引(インターバンク市場)などで通貨の流動性が低下すると、スプレッド(売値と買値の価格差)が通常より大きく広がる可能性があるほか、レート提示ができなくなる可能性が高まる。さらに各通貨ペアでレートが急変動するおそれがあり、顧客の注文レートと約定レートにかい離が生じたり、注文が成立しなかったりする可能性が出てくる。
そのため、取引やポジション管理、なかでもレバレッジを高めで管理している顧客は十分に注意して口座を管理するよう促している。
「日銀の場合には予測できない内容が出てくる可能性がある」
外為どっとコム総合研究所の調査部長・上席研究員、神田卓也氏は「今回の金融政策決定会合は、日米が同日に発表されることや政策変更の可能性があることから、市場の混乱に対応できるよう、ポジション管理をきっちり行ってもらおうという意図があります」と説明する。
英国のEU離脱時は、それまで「残留派」の優勢が伝えられていたこともあり、「プロ・アマを問わず、かなり多くの投資家が『残留』とみていましたから、それと反対の結果が出て、市場にはかなりの衝撃がありました」。そのうえで、「金融政策の決定、とくに日銀の場合には予測できない内容が出てくる可能性があるので、しっかり管理してほしいです」と、注意を呼びかける。
FX業者が注意喚起する一方で、今回の日米の金融決定政策会合は、日銀の追加緩和の「あり」「なし」、FRBの利上げの「あり」「なし」の双方で見方が割れている。どちらかに偏っていないため、「大きな反動がなく、英国のEU離脱時のような騒動にはならない」との見方がないわけではない。注意を呼びかけているFX業者も、一部を除けば英国のEU離脱時ほどではないようだ。
日銀は会合でこの3年半の金融政策を振り返る「総括的な検証」を公表するが、ブルームバーグ(9月6日付)が、浜田宏一・内閣官房参与の「FOMCの決定前の追加緩和を控えるべき」との発言を伝えたことも、「金融の追加緩和」への期待が急速にしぼんでいる要因とされる。
どうなる「市場との対話路線」
とはいえ、足元の円高圧力は高まる可能性は小さくない。じつは2016年の日銀の金融会合後のドル円相場は、「円高ドル安」になる流れが続いている。会合はこれまで5回開かれたが、円安ドル高に振れたのは1月29日にマイナス金利の導入を発表したときだけ。しかし、この時ですら3日後にはドル安円高に転じてしまった。
つまり、さすがに年初の1ドル120円から100円前後まで、一気に円高ドル安とはいかないまでも、円高圧力がかかり続けているのは確かなようだ。
日銀はこれまで、「金融緩和策は為替だけをターゲットにしているものではない」と言い続けてきたが、為替相場は株式市場では輸出企業の影響が大きく、「円安になれば株価も上がり、景気もよくなる」流れができあがっている。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也・調査部長は、「日銀は今回の会合で、これまでのサプライズ路線を変更して、市場との対話路線を打ち出そうとしています。これまでは市場との対話がうまくいっていなかったためですが、それをどのような枠組みで変更してくるのか、あるいはしないのかに注目しています」と話す。