政府の「待機児童ゼロ」の前提が...
一方、安倍首相が待機児童対策の先進例として視察もした横浜市は4月の公表待機児童7人だが、「隠れ」を含めると全国ワースト1位の3117人。育休中420人、求職活動休止366人などを含んでいないため、落差が大きくなった。同じく公表6人の川崎市も、「隠れ」を加えるとワースト2位の2553人に膨れ上がる。
また、東京都港区は公表64人に対し「隠れ」が1149人だが、認可園並みの基準で整備した「区保育室」の利用者345人も「隠れ」に含まれている。
このように、自治体による様々な取り組みを踏まえて、厚労省が「隠れ」としてまとめた数字がどこまで妥当か、単純に判断できない難しさがある。
厚労省は正確に実態を把握するため、待機児童の定義の見直しにようやく本腰を入れる。有識者と自治体関係者9人で構成する検討会を9月15日に発足させ、年度内に新基準を設け、2017年4月時点の集計から適用する考えだ。
ただ、これまで統一できなかったのも、線引きが難しいからだ。親の団体などから「認可保育施設には入れなかった児童は、全て待機児童に含めるべきだ」との主張が出るのは当然として、これに沿って数字を弾けば待機児童数が大きく膨らみ、政府が2017年度末の達成を目指す「待機児童ゼロ」に向けた計画の見直しが不可避になる。
都市部は土地や保育士の確保が難しく、保育の受け皿づくりが思うように進まない現実があり、政府が進める保育士の配置基準の緩和には「事故のリスクが高まる」との批判が根強く、慎重な自治体も多い。
「隠れ」の類型ごとの数字をまとめるのは当然だが、地域の実情などで一律には比較できない面もあり、「実態を細かく把握できる自治体の対応が重要で、それを国がどれだけ支援できるかが、待機児童問題を解決していく鍵」と専門家は指摘する。