NHK経営委員会の石原進委員長が「公共放送を維持していくためには、ネット配信であっても何らかの受信料をいただく必要がある」などと話したことが、インターネットで波紋を呼んでいる。
NHKの受信契約をめぐっては、2016年8月26日にさいたま地裁で、いわゆる「ワンセグ放送」の視聴者には受信契約を結ぶ義務はないとの判決が下りたが、この判決にNHKは控訴。9月6日には総務省がNHKに契約の実態調査を求めたが、NHKの籾井勝人会長が8日の定例会見で調査しない考えを示すなど、NHKの「強気」な姿勢が目立っている。
「経営委員会として具体的な方向性や方針を決めたわけではありません」
NHKは現在、番組のテレビ放送とインターネット同時配信に試験的に取り組んでおり、災害時などの報道番組やスポーツ番組の一部などを配信している。石原経営委員長の発言は、9月13日に開かれた経営委員会後のブリーフィングでのこと。将来的に、NHKの番組をテレビ放送とインターネット配信で同時に見ることができるようにする方針を示したうえで話した。
9月14日付の朝日新聞デジタルは「実現すれば、放送を受信できない世帯からも受信料を徴収することになる」としている。ただ、同時配信の開始時期は明らかにしていない。
発言内容について、J-CASTニュースがNHK経営委員会事務局に改めて確認したところ、15日に「経営委員会として具体的な方向性や方針を決めたわけではありません」と、発言の有無を含め、「そのようにご回答させていただきます」と話した。
とはいえ、インターネットには
「一方的に配信してカネを請求するとか、これぞ『押し売りテレビ』やん」
「地球上のすべてのインターネットユーザーから徴収してみろや」
「見たくないテレビに金など払いたくない。しかも強制的に徴収とか信じられん」
「コイツら特権階級かなにかなの? もうNHKは「解体」するか「国営化」の是非を問うべきだよ」
といった怒りの声が多く寄せられている。
なかには、
「そんなんカネとったら、世界中のネット配信事業者が同じようにカネとることになるぞ」
と、ネットだけで番組を見る人からきちんと受信料を徴収できるのか、懐疑的にみる向きや、NHKがネットユーザーから受信料を徴収することになった場合の影響に言及する向きもある。
ネットの反応の中には、あの「ブリーフ裁判官」の岡口基一氏も自身のツイッターで、「ネット利用者は、全員、NHK受信料を払う時代へ」とつぶやいていた。
NHKは「未契約世帯」への民事訴訟を続々と
総務省によると、NHKがインターネットで番組を見ている人から受信料を徴収するためには、放送法の改正が必要になる可能性があるという。「現状、放送法では番組をインターネットで24時間、同時に配信することはできません。それを可能にするのであれば、法改正が必要になる可能性があります」と指摘。そのうえで、「ただ、ネット配信をどうやるのか、によります。NHKは現在も有料サービスがありますから、受信契約を抜本的に見直して配信するのか、有料サービスの一つとして配信するのか、具体的なことが決まらないことには、法改正が必要かどうかはわかりません」という。
NHKの今後の業務や受信料、経営の在り方について検討している総務省の「放送をめぐる諸課題に関する検討会」の第1次取りまとめ(9月9日発表)によると、NHKの受信料は「今後の業務の在り方などを踏まえ、受信料の公平負担を確保し、国民・視聴者に納得感のあるものにするという観点から、今後検討していく必要がある」ことが示されている。
一方、放送法には「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」とあり、視聴者はNHKと放送の受信契約を結ばなければならない。この場合の受信設備には、テレビのほか、ワンセグ機能を搭載したスマートフォンやTVチューナーを内蔵したパソコンが含まれるというのがNHKの見解だ。8月26日のさいたま地裁の判決を不服とし、すぐに控訴を決めた根拠はここにある。
そうした中で、NHKは受信料を払っていない「未契約世帯」への民事訴訟を、管轄する簡易裁判所に次々と起こしていて、2016年9月12日には北海道内の13世帯に対して、受信契約の締結と受信料の支払いを求めた。
NHKはこれまでに北海道や東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県などで190件もの民事訴訟を提起。このうち、107件は契約を結ぶなどで訴えを取り下げ、26件は支払いに応じることで和解となり、32件でNHK側の請求を認める判決が確定している。9月14日現在、38件が係争中(12日の13件を含む)だ。
ただ、この中には「ワンセグ放送」だけの視聴者は含まれていないとみられている。