酷暑だった2016年の夏。高温に加えて、台風が相次ぎ日本各地は大雨に見舞われた。天候不順で、体調を崩してはいないだろうか。
実は、夏でも油断できない病気のひとつに肺炎がある。特に高齢者は、孫の相手で張り切っていた夏休みが終わって一息ついた今の季節、気をつけた方がよい。
クリントン氏もかかり、米大統領選に風雲急
米大統領選のさなか、民主党候補のヒラリー・クリントン氏が米国時間2016年9月11日にニューヨークで開かれた同時多発テロ追悼式典で体調を崩し、途中退席した。テレビカメラは、両脇を抱えられて車に乗り込もうとする際に卒倒しそうになるクリントン氏の「衝撃映像」を映していた。体調不良の原因は、式典前から患っていた肺炎だった。
肺炎は真冬に患者が多いが、夏にも発症する。厚生労働省「人口動態統計月報」2015年版を調べると、月別の肺炎死亡率は1月が最も多く、人口10万人対で136.1人、次いで2月が同116.6人となっている。一方9月は、同85.9人だ。ピーク時に比べると少ないが、それでも1月の6割強、2月の7割強の患者は出ている計算となる。
特に注意が必要なのが、高齢者だ。肺炎による死亡者の95%が、65歳以上という。肺炎の原因として最も多いのが肺炎球菌で、厚労省の資料によると、成人の肺炎のうち4分の1~3分の1に達する。その肺炎球菌を持っているのは、子どもだ。菌は主に子どもの鼻やのどにすみつき、せきやくしゃみで周りに飛び散って、それを吸いこんだ人に感染する。その場合、免疫力が低下している高齢者は、肺炎になりやすい。
8月から9月にかけては、「おじいちゃん、おばあちゃん」にとって孫と接する機会が増える。今の時期は、夏休みに孫の訪問を受けた後にホッとしている頃かもしれない。だが9月後半には「シルバーウイーク」がある。2016年は休日の並びの影響で大型連休とはならないが、19日の敬老の日には孫と会う人も少なくないはずだ。
かわいい孫と過ごす楽しい休日、それが肺炎球菌感染の機会にならないとも限らない。
65歳以上対象に肺炎球菌ワクチンの定期予防接種
日本国内では2014年10月1日から、65歳以上の人を対象にした肺炎球菌ワクチンの定期予防接種が始まった。全国の接種率は、定期接種開始前の2014年9月末時点では約20%だったが、2016年3月末時点では約43%に大幅に上昇した。それでも、米国や英国と比べるとまだ大きく下回っている。
接種対象となるのは2016年度中に65歳、70歳、75歳と5歳刻みで100歳までの人と、60歳以上65歳未満で心臓、腎臓、呼吸器機能、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を持つ人となる。例えば今年度中に65歳になる人で対象者は、1951年(昭和26年)4月2日~1952年(昭和27年)4月1日の間に生まれた人だ。
なお2017年度を迎えると、接種対象となる人の生年月日も変わるので注意したい。また年度末は「駆け込み接種」が増えるそうだ。混雑を避けつつ、本格的な肺炎シーズンとなる冬の到来前に受けておくとよいだろう。