アイドルグループ「嵐」のコンサートチケット5枚を転売したとして、香川県のブリーダーの女(25)が古物営業法違反(無許可営業)の疑いで2016年9月14日に北海道警察に逮捕された。
チケットの転売といえば16年8月23日に、国内アーティスト116組と国内24の音楽団が「チケット高額転売取引問題の防止」を求める共同声明を発表したばかり。その中に「嵐」も含まれているため、警察もとうとう転売撲滅に本腰を入れたとネットで歓声が挙がったが、この女の素性が明らかになるにつれ、事態はそんなに単純なものではないことが分かってきた。
日本一難しいチケットの入手経路は
J-CASTニュースが16年9月15日に北海道警に取材したところ、事件はこんなあらましだった。女は15年11月4日から12月20日にかけ4回にわたりインターネットサイトを使って札幌市の女性など3人に「嵐」のコンサートチケット5枚を販売した。道警保安課やサイバー犯罪対策課の合同捜査で、古物営業法違反(無許可営業)の疑いで16年9月14日午前に逮捕した。
朝日新聞などの報道によれば、チケット5枚の販売価格は計7万円。チケットは交換サイトで入手したという。この他にも、14年10月から16年4月にかけ、「嵐」などのコンサートチケット約300枚を全国31都道府県の人に転売し、1000万円を売り上げた疑いがあるという。
個人が不要になったチケットをネットオークションなどで販売するのは違法行為ではないが、組織的に高値で大量のチケットを転売する、いわゆる「転売屋」行為に対する反発は強く、先頃、アーティストや音楽団体が転売撲滅に向け共同声明を出したばかりだ。そのため、今回の逮捕では、
「転売屋ザマーwwwwwwww」
などとネット上で歓迎の声も挙がった。
一方で、腑に落ちない点が多々あるとして首をひねる人も現れた。この女は5枚の「嵐」のチケットを入手していて、さらに「嵐」を含む300枚ものチケットを販売したとするなら、その入手経路は何か、ということだった。「嵐」のファンクラブ会員数は190万人いて、チケットを入手するのは日本一難しいとされているからだ。
掲示板に名前を挙げて「上記の方とのお取引は絶対にやめてください」
このため、逮捕された女は、どんな人物なのか。ネットでは詮索が始まり、実はジャニーズ系のチケットに関しては、ちょっとした有名人だということが分かってきた。
「嵐チケット掲示板」には15年12月24日にこんな記載があった。「嵐チケット詐欺師の情報を求めています」というもので、
「香川県在住の○○○○○と名乗る人と、トラブルにあった方がいらっしゃいましたら、ご連絡をお願いいたします。現在公演期間中ですが、上記の方とのお取引は絶対にやめてください」(編集注:○○○○○は今回の犯人と同名)
と、友人がチケット詐欺にあったことを報告していた。
また、ツイッターでも、15年11月28日、
「嵐チケット詐欺 香川県、○○○○○・○○○○○・○○○○この名前と交換取引してる方、すぐにやめてください。チケット送ってもあちらからは送ってきません。被害者多数出ています!春にNEWSでも同じことやってます」(編集注:最初の○○○○○は今回の犯人と同名)
というつぶやきが出ていた。
「チケット交換サイト」を悪用?
さらに、16年9月14日には、今回の犯人が持っていた「嵐」のチケットの2枚は自分のものだった、とツイッターで告発する人が現れた。「チケット交換サイト」を利用したというもので、自分はチケットを送ったが相手からはチケットが来なかった。怒りに任せ「出るとこ出る」と迫ったが無駄だったとし、こう明かした。
「捜査は冬からされてて、いろんな警察から何回か連絡来て情報提供した。あまりにも被害者が多くて通報されまくったから警察も動いたんじゃないだろうか。こいつ、過去にNEWSでもやってるって他の被害者から聞いたし、余罪どころか嵐はたぶん罪の一部だよ」
つまり、今回の逮捕は転売というよりも「詐欺行為」が先にあった、という主張だ。
「チケット交換サイト」とは、タレントの熱心なファンの有志の間で運営がされているもので、チケットが余った時などに別の日時の公演のチケットが余っている人と交換できるというものだ。販売も可能で、原価で取引されている。ファン同士の相互援助で、タレントを盛り上げていこうという取り組みなのだ。こうした一連の書き込みが事実ならば、犯人は「チケット交換サイト」を利用しているファンの良心を逆手にとって踏みにじり金儲けをした、ということになる。
実際に今回の逮捕は詐欺行為が関係しているのか、J-CASTニュースは北海道警に質問しようとしたが、報道担当からは、
「J-CASTニュースは記者クラブに加盟していないため、記者発表資料以外の質問は受けることができません」
との答えが返ってきた。