カギを握る「票田」としての記者数
むろん、ライバルもいる。
同僚では最多勝を目指すクリス・ジョンソンと野村祐輔。この投手には沢村賞があるから票は伸びないのではないか。
「男気」の黒田も候補の一人として票が入るだろう。
むしろヤクルトの山田哲人が怖い。打率3割、30本塁打、30盗塁マークのトリプルスリーは確実で、しかも2年連続は史上初となる。優勝チームから選ばれることが圧倒的に多いが、卓越した記録を作ったときは下位チームから選出されることもある。
実は票田がカギを握る。東京は記者が多く、広島は少ない。山田のヤクルトは地元が東京。新井にとっての不安は票田になるだろう。
新井は広島に入団して育ち、FAで阪神入り。14年終了後、提示された年俸が2億円から7000万円への大幅ダウン。それを蹴って自由契約選手となり、2000万円の年俸で広島復帰。引退を考える年齢でMVPの最有力候補になったのだから恐れ入る。
放出した阪神は今季、打線が低調で苦しんだ。新井復活にはさぞかし驚き悔やんでいると思う。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)