海上スポーツの大会で運営者が配布したTシャツの着用者約30人に、かぶれやかゆみを伴う炎症が出た。
大会公式ウェブサイトによると、詳細は調査中だが、Tシャツに使用された「前処理剤」という薬品が誤って残ってしまったのが原因の可能性がある。
ライターの火で体をあぶられているよう
神奈川県茅ケ崎市で2016年9月10日に開催されたのは、スタンドアップパドルボード(SUP)というマリンスポーツの大会「マイナビ THE JAPAN CUP SUP Race in Chigasaki 2016」。公式サイトの発表によると、選手・スタッフ合わせて363人に大会オリジナルTシャツを配布し、そのうち約30人がかぶれ、かゆみ、アレルギー症状、やけどのような症状を引き起こしたと報告があった。
9月13日放送の「スッキリ!!」(日本テレビ系)では、被害にあった参加者の姿や声を伝えている。腹・胸・背中と上半身全体が赤茶色に変色したり、「かいたらヌルヌルしていた」「ライターの火で体をあぶられているような痛み」「震えが起きた」といった症状を訴えたりしている。
Tシャツを製造した星美製作所(東京都大田区)が同番組の取材を受けており、「プリント前に使う『前処理剤』の使い方を誤ったのが原因と思われる」と答えている。「今回初めて使った」という前処理剤は、プリントに使う顔料の発色を鮮やかにするための薬剤。溶液で薄めてTシャツに塗布し、乾燥してから顔料で着色する。しかし、同社は「乾いたかどうかは、Tシャツ表面を触って確かめるだけで、内側まではチェックしていなかった。内側に湿っている部分が残っていて、それが肌に触れて被害が起きたのではないか」とし、「完全に私どものミス」と述べた。
大会公式サイトは、Tシャツ製作に使用された薬品が残留したため症状を引き起こした可能性がある、と発表している。
「炎症が出たという報告は初めて受けた」
一方で、前処理剤自体は使い方を間違わなければ健康被害を及ぼすものではないようだ。問題となったTシャツに使用された「ガンリョウヨウ マエショリザイ」(以下、同剤)を星美製作所に納品した島精機製作所(和歌山市)の担当者は、J-CASTヘルスケアの取材に、「複数の衣類メーカーに納品しているが、炎症が出たという報告は初めて受けた」と話す。「使い方を誤った可能性はあるようですし、同剤の品質に問題があったと思われてしまうのは、少なくとも現時点では誤解」とした上で、「他の納品先には、念のため使用を控えるようアナウンスしている」という。現在、情報収集と原因究明を進めているとも答えた。
大会公式サイトでも「原因の詳細は調査中」「全回収を目指し、回収作業を進めております」としている。被害にあった人には病院を案内しているという。
今回とは別だが、衣類に使用した薬剤が残留して皮膚に炎症を起こすケースについて、医療情報サイト「オールアバウト」の14年7月2日付の記事で、薬剤師の門田麻里氏がこう説明している。
「衣類に色を定着させる染料の中には、かぶれの原因となるものがあります。シワや縮みを防止するためのホルムアルデヒドも、使用基準が定められているものの、人によっては少量でかぶれることがあるようです」
ほかにもドライクリーニングの溶剤や、洗濯用柔軟剤でも、残留したまま着るとかぶれる可能性があるという。
対策としては、製造過程で残った薬剤を落とすために「あたらしい衣類は、水洗いが可能であれば着用前に洗濯をしましょう。その際、洗剤や柔軟剤の成分が残らないよう、すすぎは十分に行って下さい」とし、炎症が出たら「医療機関を受診し、パッチテストで詳しい原因を調べることをおすすめします」と門田氏は述べている。