「自動」と「人」の切り替えが困難
完全自動運転車の開発では、自動車メーカーにIT大手も絡んで、開発にしのぎを削っている。米グーグルは2010年に開発計画を公表し、2020年前後に完全自動運転の実用化をめざし、米国内の公道で試験走行を重ねている。2016年になって、6月に独フォルクスワーゲン(VW)、7月には独BMWがそれぞれ2021年の導入を表明、そして今回、フォードが「2021年量産化」を打ち出した。提携も花盛りで、BMWは米インテルと提携し、ダイムラーなどとも共同で独デジタル地図会社を買収。米ゼネラル・モーターズ(GM)や日産はイスラエルの企業と提携するといった具合だ。
ちなみに、日本政府は2020年をめどにレベル3を実用化し、東京五輪で世界にアピールする考えで、レベル4の国内での登場が2025年ごろと見る。メーカーも、完全自動運転を視野に入れつつも、自動運転を高速道路に限ったり、ドライバーの補助にとどめたりするなど段階的に進める考えで、一番先を行く日産でも2018年に車線変更を含めた高速道路での自動運転、2020年に市街地の交差点を自動で曲がる技術を実現するのが目標。トヨタ自動車、ホンダ、富士重工業は2020年にも車線変更を含めた高速道路での自動運転を目指すというように、フォードなどの目標に比べると、かなり控えめというか、堅実といえる。
日本が慎重なのも当然で、技術的、法的に、越えなければならないハードルが立ちはだかる。
今(16)年5月、米電気自動車ベンチャー、テスラ・モーターズの「モデルS」(レベル2)が事故を起こして死者が出た。原因は解明中だが、運転者が脇見をした際、逆光のためカメラが前方を横切る大型車を認識できなかったとも言われる。このように、技術の壁はなお高い。
完全自動運転の手前の段階では、自動運転は人間の補助であり、緊急時にはドライバーによる操作に復帰する必要があり、この切り替えを確実にできるようにするのは、かなり難しいといわれる。グーグルやフォードが一気に完全運転を目指すのも、この「切り替え」の困難さゆえで、「一気に完全自動化の方が技術的ハードルは低い」(メーカー関係者)といわれる。