築地市場が移転する予定の豊洲新市場について、敷地内の汚染土を削って盛り土をしたと東京都がウソの説明をしていたことが分かった。ただ、実際はコンクリートを打っているので安全ではないかといった指摘も出るなど、混乱が広がっている。
都のウソ発覚については、これまで小池百合子知事の延期決定に異論を唱えていた移転推進派からも困惑の声が上がった。築地市場の移転時期は全く不透明になってきたからだ。
コンクリートを打ってあるので安全と判断
小池知事が2016年9月10日の緊急会見で盛り土をしていなかったとこれまでの都の説明を訂正すると、築地市場協会の伊藤裕康会長は、マスコミ取材に「ショックで驚いている」と心境を明かした。そして、盛り土のことを自分たちに告知するのは当たり前だとして、「怒り心頭だ」と話した。
豊洲新市場は、東京ガスの工場跡地になっており、地下水や土壌から発がん性のあるベンゼンなどが検出されている。ベンゼンは気化しやすいため、都の専門家会議が08年、移転に当たって盛り土をする必要を指摘していた。
都のこれまでの説明では、11~14年に858億円をかけて敷地を2メートル掘り下げ、その上に4.5メートルの盛り土をしたとしてきた。しかし、実際は、水産や青果など主要な5棟で盛り土をしておらず、地下にその部分の空洞ができていた。これは、面積にすると敷地の3分の1にも当たる。
共産党都議団が9月7日に現地調査したところ、空洞の下には、厚さ40センチほどのコンクリートが打ってあったり、砕石層がむき出しのままになったりしていた。そして、コンクリート上には、地下水とみられる水が1センチほどたまっていたという。
盛り土をしなかった理由について、都では、マスコミ取材に対し、配管などの空間が地下に必要となり、コンクリートで安全性には問題ないと判断したと説明している。情報公開しなかったことについては、「思いが至らなかった」などと言っている。
小池知事「全都庁の職員を粛正したい」
小池知事は10日の会見で、特に都がウソをついてきたことを問題視し、「間違った情報を与えることは、都政の信頼回復に逆行する」と厳しく批判し、「全都庁の職員を粛正したい」とまで述べた。
豊洲新市場の安全性についても、小池百合子知事は疑問視している。地下に空洞ができたことで耐震性にも不安があるとしており、9月12日の幹部会議で調査するように指示した。
TBS系ニュース「JNN」の11日の報道によると、2008年当時の専門家会議の座長は、「有害物質が気化してくるのか、どのくらい濃度があがってくるのか、改めて精査する必要がある」と指摘した。
ニュースのコメント欄などでは、盛り土をしなかったことへの批判が多く、「今までの知事は何をやってきたんだ」「この際、徹底的に調査してほしい!」といった声が出ている。築地市場の移転は止めるべきだといった意見や東京地検の捜査に期待する声も支持を集めていた。
一方、盛り土をしなくても、コンクリートなどが打ってあれば大丈夫ではないかと指摘する識者の意見もいくつか出ている。
元大阪府知事の橋下徹氏は、小池知事の移転延期に反対しており、都の説明不備だとしながらも、「盛り土がなくても50センチ以上の土壌入れ替えや、10センチ以上のコンクリートによる覆土があれば対策上は問題ない」とツイッターで述べた。