強姦致傷容疑で逮捕され、2016年9月9日に不起訴処分で釈放された高畑裕太さん(22)の弁護人が出したコメントは、「無罪主張をしたと思われた事件」などと異例の内容だった。
被害者女性と示談成立後にコメントを出すこと自体が異例なのはもちろん、逮捕段階では容疑を認めていたと伝えられていたことを覆しかねない内容だからだ。週が明けた16年9月12日に放送された情報番組も様々な弁護士がその背景に迫っていたが、コメンテーターからは「結局ああいう形で終わってしまうと、一体あの報道は何だったのかということになる」といった疑問や困惑の声が上がった。
逮捕時は「女性を見て欲求が抑えられなかった」と容疑認める報道
高畑さんの逮捕段階では、報道各社は高畑さんを逮捕した群馬県警の発表や取材内容をもとに
「容疑を認め、『女性を見て欲求が抑えられなかった』などと話す一方、「企ててはいません」と計画性は否定しているという」(8月24日、朝日新聞)
などと報じていた。
これに加えて、母親の高畑淳子さん(61)が裕太さんと接見後の8月26日に開いた会見では、
「『ちゃんと自分のしたことが分かっているのか』と言ったら、『申し訳ない、申し訳ない』と言っていたと記憶している」
と発言。そのため、裕太さんがホテル従業員に対して性的暴行を行った事実を認めたとの見方が広がっていた。そういったなかでの突然の不起訴・釈放に加え、弁護人がコメントで「裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件」と主張したことで、驚きが広がった。
「示談、不起訴になれば、その後はノーコメントが普通」
9月12日朝の「スッキリ!」(日本テレビ)では、菊地幸夫弁護士が
「示談が成立して不起訴になってしまえば、もうその後はノーコメントで、あとは粛々と釈放していただいて、しかるべきところに送り届ける。それで終わるのが普通」
などと、示談の後に、詳細なコメントが出たことの異例さを指摘。示談書には「示談内容は他言禁止」といった文言が盛り込まれるのが一般的だとした上で、
「示談内容については他言禁止だが、示談の内容についてはズバリとは言っていない。『示談金がいくらか』とかどういう条件とかではなく、『事件はこうでした』ということを言っている。もしかすると示談書からは外れるので可能と考えているのか、あるいは、こういうことを発表するということを含めて被害者の方の了解、OKを取って発表されているのか...、その辺はちょっと推測するしかない」
と、示談の内容にコメントを出すことがあらかじめ含まれていた可能性を指摘した。
同日午後の「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日)でも、萩谷麻衣子弁護士が
「今回のケースはマスコミにも非常に注目されているし、高畑さん側で何らかのコメントをせざるを得ないことを考えて、『コメントをしますよ』ということを前提に示談した可能性はあると思う。何の了解もなくこのコメントを出すとしたら、ちょっとえげつないな、という印象」
などと菊池弁護士と同様の見方を示した上で、
「性行為をいきなりしたということは、やっぱり被害を受けた女性が『無理矢理だった』と言えば、『いや、無理矢理じゃなかった』と言っても、そこに合理性があったというのは難しいかもしれない」
とも述べ、高畑さん側の「合意があるものと思っていた可能性が高い」という主張に疑問符をつけた。さらに、高畑さん側だけのコメントが出ていること自体についても、
「女性側の反論の機会がない。それでこれを出すというのは不可解というか、いかがなものか」
と批判した。
実際、12日夕現在、女性側からの反応は一切ないため、今回の弁護士のコメントについての真相を確かめることは困難な状況だ。
「逮捕というだけで報道することの危うさというようなことを...」
コメンテーターからは、報道のあり方を自省するかのような声も相次いでいた。「モーニングショー」(テレビ朝日)では、玉川徹氏が
「裁判にならない以上、それを検証することもできない。そうなると、逮捕というだけで報道することの危うさというようなことを、我々はもう一回考えないといけない。有名な方だからこれくらいになっているが、そうじゃなかったらどうだったのか」
と話し、前出のスッキリ!では、編集者の山本由樹氏が
「結局ああいう形で終わってしまうと、一体あの報道は何だったのかということになる。すごく居心地が悪い。ここに座っている自分も、どうコメントしていいか分からない」
と、困惑気味に話していた。