大河ドラマ「真田丸」の最新回で、関ヶ原の合戦がほとんど描かれないという「珍事」が起こった。
互いの軍勢がぶつかる様子や、西軍が瓦解する様子は流れず、「西軍惨敗」の結果が間者の報告で伝えられただけ。視聴者はツイッターで「超高速関ヶ原」「関ヶ原これだけ!?」と驚きの声を上げた。
「天下分け目の大戦が今、始まろうと...」とナレーションは入ったが
2016年9月11日放送回は「決戦」と題し、関ヶ原の合戦前後の諸将の動きを追った。とりわけ詳しく描かれたのは、真田家の分裂だ。西軍についた真田昌幸(草刈正雄)と信繁(堺雅人)、東軍についた信幸(大泉洋)、敵と味方に分かれた互いの心の機微がところどころでクローズアップされた。
合戦は、徳川秀忠(星野源)の軍勢が昌幸らの籠る上田城を攻撃する、いわゆる「上田合戦」が中心。
関ヶ原の合戦は石田三成(山本耕史)軍、徳川家康(内野聖陽)軍がそれぞれの陣地に陣取るシーンのみ。三成が「いよいよだな」とつぶやいて「天下分け目の大戦が今、始まろうとしている」とナレーションが入ったところで、すぐ上田城の陣中に場面が切り替わった。この間、およそ45秒。
直後、上田城に真田家の間者佐助(藤井隆)が現れて「西軍惨敗」の結果を昌幸らに伝え、番組は終わる。この時、すでに西軍の大谷吉継(片岡愛之助)は戦死、三成も戦場から行方をくらましたことになっている。真田家の運命を分けたともいえる関ヶ原の合戦だが、東西両軍のぶつかり合いは完全に「スルー」された。
これを見た視聴者は放送後、ツイッターに
「なんという超高速関ヶ原...」
「え!?関ヶ原これだけ!?」
と驚きの声を寄せた。
「石田三成」を称する人気ツイッターアカウントも、「え、いや待ってくれこれで終わり???」「【悲報】 40秒で関ヶ原の戦い終わる」と困惑の色を隠せない様子でつぶやいた。
真田一族が見ていないものは「描かない」スタンス
「超高速関ヶ原」の理由は何だったのか。時代考証を担当する、国文学研究資料館の丸島和洋さんは放送後、
「本作は最初から真田一族ときりが見ていないものは「描かない」(家康や秀吉のひとりのシーンなど一部例外あり)というスタンスで決めているとのことでしたので、私としてもそれを踏まえて考証をしています」
とツイートした。
関ヶ原の合戦の戦況を伝えた当時の史料を参照する限り、小早川秀秋の寝返りが起こったのは開戦直後。そのため、「本戦そのものも短時間で決着をした」という。
「超高速関ヶ原」は「真田家の目線」を貫く脚本家・三谷幸喜さんのスタンスと、最新の研究成果が組み合わされた「表現」と言えそうだ。