スマホの普及で、ゲームなどへの「課金」をめぐる問題や、ネットで動画や写真をはじめとする著作物が勝手に拡散される問題も増えてきた。
連載最後の3回目では、「実践! スマホ修行」(学事出版)での議論を踏まえながら、AKB48の岩立沙穂(いわたて・さほ)さん(21)と藤川大祐(ふじかわ・だいすけ)千葉大学教育学部教授に、電子商取引事情や著作権・肖像権について話し合ってもらった。
無料のスタンプばかりだとヒンシュク?
藤川:第7章では、お金をどう使っているかも話題になりました。飯野雅(いいの・みやび)さん(18)は沢山ネットショッピングしているということで、お店のポイントをアプリに登録してためたりしているそうです。「いかにお得な買い物をするか」を沢山話してくれました。ネットでお金を使ったりしますか?
岩立:ネットで買うとすれば洋服が多いと思いますが、試着できないというのが不安で...。「どうしてもネットにしかない」という場合は、考えます。最近壊れてしまったスマホのケースは、ネットでしか見つからなかったので、仕方なくネットで買いました。極力ネットは使いたくないです。
藤川:ゲームで課金はしますか?
岩立:ゲームではありません。AKB48のメンバーが有料でメールをファンに配信する「AKB48メール」(モバメ)は、購読しています。
藤川:飯野さんによると、達家真姫宝(たつや・まきほ)さん(14)がLINEスタンプを沢山買うそうで、「着せ替え」にもお金を使うそうです。
岩立:LINEの着せ替えは、何かのタイミングでプリペイドカードをもらって買ったことがありますが、自分で買ったことはありません。課金までしてスタンプはいるかな...?と悩んじゃいますね。フリーのスタンプでもかわいくて使えるものも多いですしね。
藤川:中高生に聞くと、無料のスタンプばかりを使っていると、ヒンシュクを買うこともあるそうです。「こっちが有料のを送っているのに、なぜ無料のしか返さないのか」ということだそうです。何でもめるか分からないですね。
岩立:えっ、怖すぎる...!
―― すさまじい同調圧力ですね。
無料で見られるものと、対価払って見てもらうもの
藤川:第8章では、著作権や肖像権について聞きました。ネット時代になって、ネットで無料で音楽を聞いたり、お金をかけてつくった写真や動画を勝手に拡散したりするケースがある。おそらく岩立さんの写真も勝手に沢山使われるケースがあります。例えば、自分の顔写真をツイッターのアイコンにするケースです。込山榛香(こみやま・はるか)さん(17)たちの議論では、「無料で誰でも見られるように公開しているものはどんどん使ってもらって構わない」。
一方で、DVDや雑誌のように、お金を払った人だけ対価として楽しめるものについては「それを無料で使うのは良くない」と、はっきりと言っていました。
岩立:モバメも、内容をネットに書いている人がいます。色々なメンバーのものがコピペされていました。それがきっかけで、その子のメールを購読したいと思う人もいるかも知れませんが、たいていは「読めちゃえばラッキー」と、購読しなくなってしまうと思います。そういう意味ではダメだと思いますね。雑誌とかが出たとしても、そのページを写真に撮ってツイッターに載せる人もいるし、インタビュー記事も拡大すると読めてしまう。そういう世の中になってしまっているので、そうしたらお金を払って何かする人は減ってしまいます。社会的にも問題だと思います。
藤川:著作権の考え方には二つ方向性があり、両方が必要だと言われています。ひとつが、著作物が広まる、使ってもらうということ。もうひとつが、作った人の権利や利益がしっかり守られるということ。両方は矛盾する考え方ですが、このバランスをどう取るかが課題です。ネット時代だからますます難しくなっていきます。
岩立:どこまで守られるべきなのか...。守られるべきだとは思いますが、難しいですね。これこそ、答えが出ないですね。
藤川:15期の皆さんは、どうすれば自分たちの活動が維持できるか、熱く語っていましたね。非公式で勝手に写真を売る人がいますが「ああいうのは困る」。雑誌のコピーが出回ると「雑誌を作っている人に申し訳ない」とも言っています。「お世話になっている人のもとで広めたい」。そのためには、公式で作っているものはいいものにして、多くの人が買いやすくして、非公式なものを駆逐するんだ、ということを熱く語っていました。
チケット転売問題でAKBがしていること
岩立:チケットの転売が最近問題化しています。舞台を見に行くのが好きなのですが、調べたときに、チケットを売買するためのサイトがあり、それに出ている席が、1階席の前から8列目といった、すごくいい席です。それを高く売っているんです。私は別にそんないい席で見られなくても、(ステージから遠い)「天井席」でも、その会場にいられればどこでもいいんです。にもかかわらず、こういった転売行為のせいでチケットが完売してしまうのは、すごく許せないです。
藤川:転売というのは第三者がもうけてしまって、お客さんもチケットを取りにくい。運営する側も正当な収入が入らない。その点、AKB48の劇場公演では、厳格な本人確認を行っていて、転売が起きにくい仕組みになっていますね。
岩立:やっぱり、公演には(抽選に)当たった人に来てほしいですね。それを当てるために、頑張って予定を合わせて応募している人もいるはずです。
藤川大祐さん プロフィール
ふじかわ・だいすけ 1965年東京生まれ。 東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学(教育学修士)。 千葉大学教育学部教授(教育方法学・授業実践開発)兼・副学部長。 メディアリテラシー、 ディベート、 環境、 数学、 アーティストとの連携授業、 企業との連携授業等、 さまざまな分野の新しい授業づくりに取り組む。学級経営やいじめに関しても研究。
岩立沙穂さん プロフィール
いわたて・さほ 1994年生まれ、神奈川県出身。愛称は「さっほー」。2011年12月、AKB48の13期研究生として劇場デビュー。AKB48の活動と並行して短期大学を卒業。同期の中ではお姉さん的存在だが、「ぶりっこ」キャラとも言われる。13年9月に正規メンバーに昇格し、現在は高橋朱里チーム4に所属。16年9月にはリーディングシアター「恋工場」、10月には音楽劇「赤毛のアン」に出演予定。