「40過ぎの童貞」は「天使」になった
血気盛んな10代に、じっと欲望を我慢し、その分の時間とエネルギーを人間形成に注ぐのがいいらしい。歴史上の人物の中でも、生涯童貞を貫き、大事を成した人物は多い。ニュートン、ベートーベン、カント、ニーチェ、宮沢賢治、上杉謙信など。ヨーロッパ人に多い印象を受けるのは、伝統な影響だろうか。
100人以上の愛人がいて「英雄色を好む」を若い頃から実践したローマ帝国のカエサルは、現在のフランス・ドイツ地方であるガリアに遠征した時、ラテン民族とは正反対の性風俗があることに驚き、『ガリア戦記』にこう書き残した。
「ガリア人(ゲルマン民族)は童貞を尊ぶ。ことに20歳以上の童貞は珍重される。......長く童貞を守るほど身長が伸びる、体力が優れる、筋肉が強くなる......」
ゲルマン民族の童貞尊重の風習がその後、ヨーロッパでは「男が30歳を過ぎて童貞を守っていると『魔法使い』になり、40歳を超えると『魔導師』(または天使)になる」という言い伝えになり残ったといわれる。
明治の元勲を多く輩出した松下村塾の吉田松陰も30歳で刑死するまで女性に触れなかった。若い頃、東北旅行をした時、あまりの堅物ぶりを和らげようと、同行者が宿泊先で遊女をあてがった。翌朝、同行者が首尾を尋ねると、松陰はこう礼を言った。
「驚きました。しかし、大いに勉強になりました」
どうも様子がおかしいので、遊女に聞くと、松陰は本当に一晩中、遊女と一緒に勉強していたのだった。「色事に溺れ、国事を忘れるのが恐ろしい。自分は臆病者であります」が口癖だったと伝えられている。