公開から10日で興行収益が38億円を突破するという驚異的なヒットになっているアニメ映画「君の名は。」(新海誠監督、2016年8月26日公開)。大ヒットの余波で、ファンが映画のモデルとなった場所を訪れる「聖地巡礼」も過熱し、周辺住民に迷惑をかけているとして、映画の制作委員会が公式HP上で注意を呼びかける異常事態となっている。
ネット上で「アニメオタクはけしからん!」とアニオタ叩きが始まるなか、「俺たちはではない。やってるのはニワカの一般人」などといった攻防が始まっている。
「騒音や早朝深夜の訪問に関する苦情を多数いただきました」
「君の名は。」製作委員会は16年9月9日、映画に登場または関連のある場所に多くのファンが訪れている、とし、
「近隣の方々より騒音や早朝深夜の訪問に関する苦情を多数いただきました。関連場所への訪問を予定されている皆様におかれましては、節度のある行動、及びマナーに十分心掛けていただきますようお願い申し上げます」
と注意を促した。
アニメに登場する場所や建物などに行くことは「聖地巡礼」と呼ばれている。アニメ「らき☆すた」の聖地、鷲宮神社(埼玉県久喜市)や、「ガールズ&パンツァー」の茨城県大洗町などが有名で、毎年大勢のファンが訪れ、イベントも開かれて「町興し」に一役買ってもいる。
しかし、そうした「聖地」では敷地内に無断で入ってきて写真を撮ったり、集団で騒いだとして問題になることもある。
「君の名は。」の大ヒットによって映画に登場する図書館のモデルとされる岐阜県の飛騨市図書館を訪れる人も増え、同図書館では9月1日、写真撮影する際には他の利用者が識別できるような撮影をしないようにと呼び掛け「許可申請を行ってください」との掲示を出した。
そして、今回の制作委員会の注意喚起を知った人たちは、相当な迷惑行為が行われているとして、ネット上で「オタクは社会的常識がない」などとオタク叩きを開始した。しかしこれに真っ向から立ち向かったのは当のオタクだ。
「やらかしているのはポケモンgoといっしょで、大勢の一般人でしょ」
「むしろアニメをいつも見ないガキどもだろ」
「騒いでるのはキモヲタじゃなくて、流行に乗らないと死んでしまうパリピ(party people)層だぞ」
「アニヲタ以外も巡礼してるから、自分が迷惑な存在だという事にすら気付いていない」
などといった異論を唱え始めた。
人気沸騰「須賀神社」に行ってみると...
どうしてアニオタが反論を始めたのか。掲示板に書かれた説明によれば、オタクはその存在だけで嫌われ、監視されてきた歴史があるから余計な注目を集めないよう、周囲を刺激しないように注意を払いマナーにとても気を使うようになっている。しかし、アニメをあまり見てこなかった「ニワカ巡礼者」はその辺の事情がわかっていないため、色んなことをやらかしてしまう、というのだ。
J-CASTニュースは16年9月10日午後1時半頃に、映画のキービジュアル的な存在になっている東京四ツ谷の「須賀神社」に行ってみた。この映画では神社の入り口につながる階段が最も有名で、カメラを持ち「聖地巡礼」に来たと思われる人が、階段の下に8人、階段を上り終えた場所に9人いた。本殿のある敷地はそれほど広くなく、小学生のグループを含む10人ほどがお参りをしていた。全体としては20代前半の男女が中心層だった。誰一人騒いでいる様子はなく、神社の雰囲気に浸ったり、写真撮影したりして楽しんでいた。神社事務所を訪ね話を聞いてみたところ、
「ごらんのように階段を中心に皆さんは大人しく写真を撮影しています。すぐ近くに民家がありますが、苦情のようなものは一切出ておりません」
ということだった。これからは訪れる人がもっと増えることになるのではないか、と担当者は話していた。こうした形で注目されことについては、
「いいんじゃないですかね」
とまんざらでもない様子だった。