ある鉄道ファンがツイッターに投稿した一枚の写真をきっかけに、東海道新幹線の男性運転士(29)が、運転台の上に両足を投げ出した「極めて不適切な姿勢」で運転をしていたことが発覚した。
問題の運転士はJR東海の聞き取り調査に、足を上げていたときの運行速度は「時速200キロくらい」だと説明したという。こうした状況が報じられると、ネット上ではこんな疑問の声が相次いで飛んだ。「高速走行中の新幹線の運転台なんて、どうやって撮ったんだ」――。
新幹線は「時速200キロくらいで走っていた」
JR東海によると、運転士の不適切行為があったのは2016年9月6日13時55分頃。掛川-浜松間を走行していた東京発大阪行「こだま653号」の乗務中、靴を脱いだ状態で両足を運転台の上に乗せて運転していた。運転士は同社の聞き取り調査に対し、
「時速200キロくらいで走っているとき、疲れた足を伸ばすために10秒ほど足を上げていた。過去にも5~6回やったことがある」
と説明したという。同社は「新幹線の運転士としてあってはならない行為であり、極めて不適切」として、「厳正に対処する」とのコメントを出している。
こうした運転士の不適切な行動が明らかになったのは、一般の鉄道ファンが6日にツイッターへ投稿した一枚の写真がきっかけだった。その写真は、新幹線の正面窓に両足の裏が写り込んだ様子を車外から撮影したものだ。投稿者は画像をアップするとともに、
「酷いもんだよね?!足を上げて運転してるよ!!新幹線の運転士がこれはアカンだろ」
ともコメントしていた。JR東海の広報担当者によれば、「ツイッターの投稿を受け、6日に一部マスコミからの取材があって事態を把握しました」という。
この一件を受け、ネット上では「怠けたらダメだろ」「嘆かわしい」といった運転士への批判の声が相次ぐと同時に、ある「疑問」が浮上することになった。
一眼レフカメラの「動体予測」機能
ネットユーザーの間で盛んに囁かれた疑問とは、時速200キロで走っていたという新幹線を「どのように撮影したのか」というもの。ツイッターやネット掲示板には、
「高速走行中の新幹線の運転台なんてどうやって撮ったんだ」
「どうやってあんな写真撮ったの?ってのが一番の疑問」
「走行中の正面の写真、誰がどうやって撮ったワケ?」
といった書き込みが数多くみつかる。
実際のところ、高速走行している新幹線を撮影するには、高度な技術や特別な機材が求められるのだろうか。J-CASTニュースは、複数のプロカメラマンに今回の「足上げ写真」について聞いた。
日本写真芸術専門学校の主任講師で写真家の林憲治氏(67)は、「現行の一眼レフカメラを用いれば、誰でも撮れる写真だと思います」と話す。現行機種の多くは「動体予測」と呼ばれる機能を搭載しており、高速で移動する物体にも自動でピントを合わせることができるという。
プロカメラマンの阿部稔哉氏(51)も、「少しカメラの知識があれば、撮影すること自体は簡単でしょう」という。シャッタースピードについて聞くと、「新幹線なら1000分の1秒か、500分の1秒くらいで撮れるのではないか」という。現行の一眼レフカメラでは、最低でも4000分の1秒には対応しているとも付け加えた。
ツイッターに写真を投稿したユーザーに対しては、10社以上のマスコミから取材依頼のリプライ(返答)が相次いだが、同ユーザーは8日夜に、
「私は子供の頃から新幹線が好きで、新幹線を撮影することが好きなだけです(中略)一切取材を受けるつもりはありません」
とツイートしている。ただ、同一人物と思われるインスタグラムのプロフィール欄には、使用機材についての記述があり、それによるとプロのカメラマンも使用する「EOS-1D Mark III」という高価なカメラを使っていることが分かる。
阿部氏は「写真の構図がしっかりしているので、撮影したのは専門的な列車撮影技術を持った人ではないか」との賛辞も送った。その上で、高速走行する新幹線の窓の中を動画や肉眼で確認するのは難しいとして、
「今回の一件は、一瞬を切り取って伝える『写真』というメディアの特性が十分発揮されたものでしょう」
と話していた。