判決ロジックを言い換えれば「放送法改正を怠った総務省の怠慢」
ここまでの動きをみると、NHKは予定通りだが、総務省は滑稽である。
さいたま地裁の判決は、放送法を子細に検討し、放送法の用語の定義を定めた2条14項では、「設置」と「携帯」が区別されていると指摘している。受信料の根拠となっている放送法64条は、2条14項より前に制定されていたが、64条1項の「設置」の定義が再検討された形跡はなく、従前通りの解釈をすべきだとし、「放送法64条1項の『設置』が『携帯』を含むとするNHKの主張には相当の無理があると言わざるを得ない」としている。
要するに、さいたま地裁判決は、携帯電話を放送法に取り入れたときに、受信料の規定を改正しなかったから、ワンセグ機能付き携帯電話では受信料を徴収できないというロジックだ。言い換えれば、放送法改正を怠った総務省の怠慢だというわけだ。そこで総務省が過剰に反応したのだろう。
もちろん、裁判はこれから控訴があるのでまだ確定したものではない。しかし、放送法を改正しておけば何も問題はなかったはずだ。いくら昔の年代を持ちだしても、携帯も存在しなかったような時では説得力もないだろう。時代に合わせて法改正するという基本が総務省には欠けていたといわざるを得ない。そもそも、受信料の規定を改正しようとすると、今の受信料制度を維持できるかどうかも怪しくなる。だから改正しなかったのだろう。
この際、ワンセグでは受信料を取らないと宣言して、日本独自のワンセグ技術を世界に広めるくらいの発想の転換をしたほうがいいだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「日本はこの先どうなるのか」(幻冬舎)など。