広島市に本社を置くコンビニの「ポプラ」が、2016年夏の公募で獲得したJR新宿駅南口に直結する高速バスターミナル「バスタ新宿」への出店権を9月1日に「辞退」していたことが分かった。同ターミナルを運営する関東地方整備局東京国道事務所の担当者が7日のJ-CASTニュースの取材に明かした。
「正直、事業者が辞退するとは想定していなかった」――。東京国道事務所の担当者は、J-CASTニュースの取材にこう率直な心境を漏らした。すでに9月5日から再公募を開始しているが、購買施設の出店は「(ポプラの)辞退により、2か月程度の遅れが出る可能性がある」という。
4月以降、1日平均2万人の客が来場
4月4日に開業した「バスタ新宿」は、それまで新宿駅西口を中心に19カ所に分散していた高速バス乗り場を1か所に集約した4階建ての大型ターミナル。開業から1か月の利用客数はのべ58万人で、1日平均では約2万人が訪れたことになる。
だが、そんな巨大ターミナルには「売店」が1店舗もなかった。そのため、利用客からは「本当に何にも無い」「早くコンビニ作るべき」などの不満がSNS上に噴出しており、なかには「バスタになってから不便になった」との声すら見られた。
こうした状況を重く見た東京国道事務所は、5月24日に購買施設の設置に向けて事業者を公募。8月1日に「ポプラ」が出店権を落札したと発表し、「事業者と開業に向けた調整を進める」としていた。
この告知は大きな反響を呼び、ネット上でも「やっとコンビニができる」「めっちゃうれしい」などと歓迎する声が相次いでいたほか、ネットメディアの中には「バスタ新宿にポプラの出店が決定」などと確定した事実のように伝えるサイトも数多く出ていた。
こうした状況の中で、東京国道事務所は9月5日に突然、
「『バスタ新宿』の購買施設について、8月1日に特定した事業者が辞退したため、 このたびあらためて公募を開始することにしました」
として、「再公募」を行うことを公式サイト上で発表したのだ。
同事務所の担当者によれば、ポプラ側から辞退の申し入れがあったのは9月1日。理由については、「自社都合」としか聞いていないという。
ポプラ「(出店辞退は)苦渋の決断だった」
「正直、事業者の辞退は『想定外』でした」――。先述の担当者はこんな率直な心境を漏らした後、再公募の手続きについて、
「ポプラの辞退を受け、公募の要件を見直すことにしました。(出店権を)辞退した事業者には『ペナルティ』を設けるとの記載を新たに追加するほか、繰り上げ方式など辞退者が出た際の手続きについても記載しました」
と話す。今回ポプラが辞退した影響で、バスタ新宿への購買施設の出店は「2か月程度の遅れが出る可能性がある」とも説明した。
だが、ポプラ側はなぜ落札した出店権を辞退することにしたのだろうか。1日あたり数万人の利用客が集まる巨大施設への出店を「自ら断った」ことについて、ネット上では「賃料が高すぎたのか?」「地代の問題じゃない気がする」などと様々な憶測が飛び交っている。
ポプラ関東地区本部の担当者はJ-CASTニュースの取材に対し、出店権を辞退した理由について、
「賃貸借料金以外の条件について、東京国道事務所との折り合いがつきませんでした。このまま不調な協議を続けるよりも、別のテナントが入った方がよいと判断しました」
と説明し、具体的な理由は明かしていない。その上で、「バスタ新宿での購買施設のニーズが高いことは重々承知している」として、
「苦渋の決断だったことは確か」
とも話している。
ポプラの「辞退」を知ったバスタ利用者などからはツイッターに、
「出店は期待されてたでしょうに、残念」
「コンビニのない状態は続くことになるのか...」
などと、不満や落胆の声が相次いでいる。